第14話 専属メイド、ウランの正体
中央広場に立つ4人の銅像──
勇者の称号を得たイケメン、イチバネ・クロム
魔法王の称号を持つ若き魔導士、ユマ・エリン
強大な攻撃力と防御を備えた要塞、ドワイス
精霊を身に纏う魅惑の弓姫、フェルノア
兼ねてよりエアフィルダール迷宮を根城としていた魔王のひとり、『堕天使ネフィリム』を討伐した勇者パーティーである。
世界に点在する7
そんな中、新たな事件として蜘蛛レオンがインフェルザン王国の首都、マイアサウラ近辺に姿を見せたという噂が光の速度で広がった。
「俺たちも蜘蛛レオンを倒せば勇者になれるのかなー」
「ユマ様のような魔導士になりたいわー」
「断っ然、イチバネ様だろう! 雷使いの勇者様、カッコイイよなー」
こんな話題で持ち切り。昨日の今日でここまで噂が広がるなんておばちゃんの近所の噂なみだぞ。
《おばちゃんとは面白い記憶じゃな、近所や色恋の噂はとんでもないのじゃな》
そんな噂も学校中でもちきり、
学校が終わればどこから集まったのか街中には冒険者で溢れ、ギルドでは『生け捕り』に高額報酬がかけられるほどのお祭り状態となっていた。
さらに翌日になると、蜘蛛レオン饅頭やグッズ類などが多くの店先並び、商人たちの商売魂を感じさせていた。
《そろそろ街の外に魔物を喰らいに行くのは止めたらどうじゃ》
「そんなこと言っても他に食事をする手段が無いし……お金が1円もないんだよ」
《
確かにここまで騒ぎが大きくなってしまっては気軽に蜘蛛レオンの姿になれない。少し民衆の蜘蛛レオン熱を冷ました方が良いだろう。
「メイレーン、教えて欲しいんだけどこの国でお金を稼ぐ方法って無いかな? グラッセス家を出てから厳しくってさ」
「うーん……」考え込むメイレーン、「私とバーバラが迷宮付近で経験値稼ぎしてたでしょ。あれって、お小遣いを稼ぐ目的もあるのよ」
──メイレーンの話しによると、魔物を倒すと核というものが体内に生成される。魔物の強さに準じて密度が高く高値で取引されるというのだ。
「それとギルドの依頼を受けるくらいかしらね~。学生だから無理は出来ないけど……あとは市場なんかでアルバイトしている子もいるわ」
「アルバイトかぁ、中等部生でも出来るんだね」
「そうね、お金のためにやっている人もいるし、将来に向けた経験や勉強のためにやっている人もいるわ」
なるほど……でも、あれだけ魔物を倒してきたけど核なんて見たことないぞ。
《それは主が喰らうてしまうからじゃ。『宿る力』は魔力となって抜け失せ、強さは核となって残るのじゃ。この核を喰らうて経験値とするのが『喰らう者』じゃな》
魔物を倒した後に残った肉を喰らって経験値を得るか、核として換金するかの2択ってわけか。
《そういうわけじゃ》
と、いうわけで、放課後にエアフィルダール迷宮付近に向かう。移動はもちろん蜘蛛レオンのスピードを活用した高速移動だ。
頭上に見える数字は魔物の場所を教えてくれる。ユウノの体とドッキングして経験値稼ぎ&核稼ぎに
《ユウノのレベルが1上がりレベル6となりました》
なんだか楽しい。弱い魔物を倒してレベルを上げていく。これから壮大な冒険を始める序章のような高揚感を覚える。
《ここはゲームではないのじゃぞ》
「ま、まさか……ウルドからそんなツッコミが来るとは思わなかった……」
《我も日々勉強しておるでな。主の記憶にある娯楽は何度見ても楽しいぞ》
まったく、記憶を覗きすぎだっての。
《ユウノのレベルが1上がりレベル7となりました》
《ユウノのレベルが1上がりレベル8となりました》
《死者操作が1上がりレベル6となりました》
《死者操作が1上がりレベル7となりました》
いやぁ、レベルが良く上がること。強めの魔物に鋼化糸を突き刺してユウノの体で殴るだけの簡単なお仕事。時折つまみ食いはするが、しっかり核を回収していく。
っと、夢中になり過ぎて随分と奥まで来てしまった。
「やー!」
ん?聞いたことのある声……「マイン! ……と、誰?」……そこに居たのは剣と盾を携えた
「お、お兄様。なぜここに?」
「えっと……メイレーンに教えてもらってさ。お金を稼ぐなら核を売ればいいって」
「でも、この辺りの魔物はお兄様には厳しくないですか? 記憶を無くす前のお兄様でレベル14位だと思ったのですが」
笑って誤魔化した……「で、そちらの女性は?」
「ユウノ様、私はマイン様の専属メイドでウランと申します。この場でお嬢様が経験値稼ぎをしていたことはくれぐれもご内密にお願いします」
「ああ、もちろんだよ。僕はもうグラッセス家の人間じゃないからね」
「ありがとうございますお兄様、わたくしいつかはバタイ兄様に狙われるような気がするんです。ウランとわたくしだけでは心元無いので少しでも強くなろうと手伝ってもらっています」
ウランの頭上にある数字は21、レベル10のバタイやレベル18のボランド執事が相手でも負けることは無いだろう。
《それは、相手がふたりだけの場合じゃな》
確かにその通り。僕にナイフを突き刺したフードの女。彼女の頭上には26という数字が刻まれていた。もし仲間だったら……
「ウラン、そろそろ帰りますわ。あんまり遅いと鍛えているのがバレてしまいます。お兄様も一緒に帰りませんか?」
「止めておくよ。何のキッカケがあるか分からないからね。バタイの手の者に見つかったら面倒だろ。それにもう少しだけ核稼ぎをしたいんだ」
と、言うのは建前で、帰りに夕食を調達したかったのである。
帰り道は超絶ダッシュ、蜘蛛レオンのスピードは馬車より早い。目についた魔物を網化糸で捕獲し異空間に収納する。もちろん食べきれる範囲でだ。ウルドが言っていた通り『その地を守る者』にでも目をつけられたら困る。
「お主は何者だ?」
突如現れたのはメイド服の女。
「ウラン……さん?」
「なぜ私の名前を知っている。蜘蛛レオン、そなたに警告にきたのだ。必要以上に魔物を食料にするな」
やっぱりウランさんだよな。頭上の数字は21だし……彼女が……「『その地を守る者』なのか」
「なぜあなたがその名を知っている。それに魔物なのに知能まで……」
「僕はエアフィルダール迷宮出身でね、アウラに師事を受けた魔物なんだ」
「なんと、アウラ様に……それならそなたの強さも納得が出来る。疾風のように舞い獲物を捕らえる姿は
シルフィード? シルフィードって森の妖精?
《その地を守る者は、四大精霊の加護を受けておってのう。森や平原を管轄しているのがシルフィードの配下ってわけじゃな》
ウランの周りに急な強い風が吹く、どこからともなく現れた葉っぱが彼女の身を包んだ。背後霊の様に現れた妙齢の女性が重なると周囲に眩い光を残しつつ丁寧にお辞儀をした。
その可愛らしい姿と雰囲気から……「ドライアド……」と思わず呟く。
「私は、ドライアド族の族長がひとりです。宜しければあなたの正体を明かしてはもらえないでしょうか」
頭上の数字が一気に52へと跳ね上がった。
《話しても構わんぞ。しかし、我が主の中にいることだけは内密にするのじゃ》
「僕は……」、彼女に正体を話し始めた。
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