第13話 マイン・グラッセスの中身
「思ってるんだけどグラッセス家って不思議だよね」
《何を不思議に思っておるのじゃ》
頭上に表示されている数値、間違いなくその者のレベルが数値化されたものだろう。
グラッセス家当主であるヘクターは『20』なのに対して妻であるミヤビは『22』と高い。ミヤビは公爵家出身と言っていたので、教養として武術を学んできたのかもしれない。
迷宮を出たところで出会ったクラスメイトのバハーラが『10』でメイレーンが『11』、弟バタイが2つ年下で『10』ということは強い方なのだろう。
不思議なのは隣にいる妹のマインのことだ。……4つ年下なのにレベルが『16』と年齢にそぐわないのである。
《そんなこと気にしたって分かるわけないじゃろ》
ウルドの言う通りなんだが、気になるものは気になる。きっと不思議なことに惹かれる人間としての感情なのだろう……と思う。そう、僕はキチンと人間の心を持っているんだ。
「実はわたくし……『邪視・守護霊』を持っているんです」
「凄いじゃないかマイン」
グラッセス家を継ぐための必須スキル『邪視・守護霊』……相手の守護霊を見通す力、守護霊というのは両親のどちらかと同じになる。
ヘクターと同じ守護霊であるこいうとは『邪視・守護霊』スキルを所有していることと同義なのだそうだ。
「それで……バタイ兄様たちがわたくしの才を邪魔に思っているんです」
「なんでそう思うの?」
「私がグラッセスの強い能力を受け継いだんです──
マインが言うには、邪視スキルにも強さがあってヘクターとユウノは同程度の能力があるが、バタイはそれを下回っている。しかしマインは父親を能力を凌駕する能力だと言うのだ。
──これは誰にも言っていないのですが、実はわたくし転生者なんです」
え? 転生者? 僕と同じ転生者なのか……『僕もだよ』と言いたい気持ちをグッと堪えた。
「転生者……? マインが?」
「はい、……わたくしは日本という国で高校生だった『
「え……えと、それを何で僕に?」
「お兄様の守護霊はわたくしの力をもってしてもハッキリと分からないのです。神に近い存在というのでしょうか。知っておいてもらった方が良いと思ったのです」
そうか、儀式を通してしか記憶に留めてはいけないって言ってたものな。
「で、僕は何をすればいいの?」
「わたくしの味方でいて欲しいのです。何かあった時はわたくしやお父様の味方でいて欲しい……ただそれだけなんです」
《この子は信じられるぞ。悪い臭いが全くしないのじゃ》
ウルドの言葉に「分かった」と返事をした。ずっと張りつめていた表情がぱぁーっと明るくなった。
《死者操作が1上がりレベル5となりました》
うぉ、なんでシリアスなシーンで唐突にレベルが上がるんだ。狙っているとしか思えない。
「それではお兄様、失礼します」
……でも、
《主の記憶で言うなれば生まれ変わりと同義じゃ。昔の記憶を持っているか持っていないかの違いしかない。しかし、主の過去から察するに雷霆は上位神の気まぐれで落としたのじゃろ。だからその時に死んだ者全てはこの時代に転生しているのじゃろう》
「生まれ変わりか~。確かにそうなのかもしれない。まぁ、直ぐに死んでこんな姿になったけど」
考えてみると最初は不幸だと思ったけど今の流れは幸せなのかもしれない。嫌なしがらみもないし、何より自由だー!
「さーて食事食事、何を食べようかなー」
家ではメイドが用意してくれたけど今は手伝ってくれる人は誰もいない。
「よしっ! 肉を喰らおう」
最近は料理されたモノばかりを食べてたからなぁ。確かに美味しいは美味しいけど、故郷の味と言ったら魔物の死肉って感じだよ。
《嫌な故郷の味じゃな》
「僕っぽくていいんだよ。前世でずっとボッチだった僕が転生して更に磨きがかかったみたいでさ……」 (イッテテ カナシク ナルケド)
街外れに自宅があるので、食料確保のために街の外へ出るのが楽である。
ユウノの体を異空間にしまってぇ……久しぶりの蜘蛛レオンの体だぁ。今までの体が嘘の用に動かしやすい!
……調子に乗って糸を吐き、粘化糸や鋼化糸で暴れまわる。素早さを活かした行動に牙から毒を流し込んだり、毒を付与した糸で魔物を倒しまくった。
「あぁ、懐かしい味だぁ……。なんていうのだろう、久しぶりすぎて魔物ごとの機微な味の違いまでわかる気がする」
《主は少しは自覚した方が良いのじゃ。今の行動は凶悪でヤバイ魔物と同じじゃぞ》
あぁ……確かに……無駄な殺生。ネフィリムと同じだなぁこれじゃあ。魔物のレベルは高くてもせいぜい15程度、平均10くらいだから弱すぎて戦ってる感じが薄くってやり過ぎてしまった。
《良いではないか。主はキチンと魔物の命を
「そうなの?」
《主の記憶を借りるなら地縛霊じゃな。倒された魔物は『宿る力』が抜けて分散するのじゃ。その力が融合して進化する……迷宮のような狭い場所では強くなろうとより多くを融合をしようとするじゃて復活まで時間がかかるのじゃ》
「なるほど、時間がかかるからその間に魔物が駆逐されちゃうと困るわけだね」
《復活するときに『宿る力』が少し減少するでな、自然に増える力以上に輪廻が繰り返されると迷宮の弱体化が起こるのじゃ。まぁ、やりすぎてしまうと『その地を守る者』に粛清されるのじゃがな』
ほどほどにしておかないといけないなぁ……。
「お、おい……あれ、蜘蛛レオンじゃないか」
「マジか。こんな所に姿を表すなんて……まだ気づいてないようだ、回り込んで討伐するぞ」
あのー聞こえているのですが…………。 よし! 逃げよう。
《これはあれじゃろ、メタメタスライムってやつじゃろ!……いや毒もちだからはぐれたスライムじゃか》
「ウルドは記憶を覗きすぎです」
《主の記憶にある娯楽は楽しいのじゃ》
逃亡効果音が聞こえる程に走り去った。倒すことは余裕だろう……でもそんなことをしたら凶悪モンスター認定待ったなしだ。
《全員、
「こらウルド、いきなり怖いこと言うんじゃないよ」
《面倒なことになるから言ったのじゃ》
結果──
街は大騒ぎになっていた。蜘蛛レオンのは〇れメタル以上に経験値が美味しい魔物。人族が1匹倒せばレベル35の到達は確定、広場の中央に立っている魔王を倒した勇者のひとりがレベル35だったようだ。
学校でもその話題で持ち切り。僕が伯爵家を勘当されたニュースを遥かに凌いだ。
「ねぇ、蜘蛛レオンってそんなに執着するほど凄い生き物なの?」
クラスメイトであるメイレーンに聞いてみた。
「そうよ、”命に過ぎたる宝はないが蜘蛛レオンだけは例外だ”なんて慣用句もあるくらいよ」
「なにそれ?」
「蜘蛛レオンを倒せば人としての成功は約束されるのよ。ギルドからも冒険者からも引き手数多なほどに強くなれるから」
こりゃー凄い。でも、迷宮で随分と蜘蛛レオンの肉を食べたけどそんな馬鹿みたいにはレベル上がらなかったけどなぁ。
《あたりまえなのじゃ。同族同士で高い経験値が貰えたら滅んでしまうでな。そうが本能レベルで刻まれておるのじゃ。主は唯一蜘蛛レオンとしての種族を外されているからのう。もしかしたらでかい経験値をもらえるかもしれんぞ。噂の魔物を討伐したらどうじゃ》
って、自分で自分を討伐できるか―! とウルドに向けて強く心の中で叫ぶのであった。
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