第46話 ターナが病気になりました。

ある日の事。


「トレニア。せっかくの休日だったのにすまない」


朝起きて横で寝ていたターナの顔を見ると赤く、咳をしている。


「無理しないで。たまにはゆっくりしないとね。何か食べないといけないわ。何か食べる物を持ってくるわ」 


「トレニアありがとう。じゃぁ我儘を聞いてくれるかな。今日一日トレニアの料理が食べたい。食べればすぐ元気になる」


ターナは甘えるように頬を擦り寄せ耳元でおねだりしている。


「ふふっ。くすぐったいわ。私の料理は美味しくないかもしれないわよ?」

「いいんだ。トレニアを舌でも感じたい」


その言葉に私が顔を真っ赤にする。


「もうっ!分かったわ。作るから少し待っててね」


 私は伯爵家の研究室や庭から数種類の薬草を拝借し、厨房でスープを作る。料理長が私の作るスープを興味深そうに見ているわ。


消化を良くするために細かく野菜を刻み、スープを作ると二人の寝室へと運んだ。


「ターナ、起きている?身体に良いスープを作ったわ」


ターナはベッドから起き上がり、口を開いて待っている。ふふっ、なんだかぱくぱく開けて待っている姿はお魚みたい。


「仕方ないわね。はい、あーん」


私は熱々のスープをふぅふぅと息を吹きかけて冷ましてからターナの口に運ぶ。


「トレニア、なんて美味しいんだ。こんな優しい野菜スープを食べた事がない。何だろう?サニア菜か?それとは別の薬草が他にも数種類ほど入っているのか」


使った薬草を当てるべくターナはモグモグ食べている。


「トレニア、薬を飲むより野菜スープで食べた方が何倍も美味しい。知らなかったな」

「それはね、ガーランド領地の領民達に教えてもらった食べ方なの。大きくなるまで私は領地で一人暮らしていたから領民の人達に生活の知恵として教えてもらったの。


ガーランドは薬草の産地だから普段から野菜として食事に取り入れているのよ。このスープの効能は発汗、抗炎症という所かしら。しっかりと寝て汗をかかないとね」


ターナは自分でスプーンを持ち食べ始める。


「なんて素晴らしい奥さんなんだ。トレニア、素晴らしい。凄いことだ。病気が治ったら薬師長へ報告しよう。民間療法として一般に広めるのが良い」


普通に食べていた物を喜んで食べてくれるってこっちが嬉しくなる。


「ターナ、スープを食べたらしっかり寝てね」

「分かった。だがトレニアと離れて過ごしたくないな。側にいてくれるか? それにトレニアの作るお昼ご飯や晩御飯も待ち遠しい。早く良くなって二人で美味しく食べたい」


そう言って私を抱きしめてくる。


「ターナ、私は側で本を読んでいるわ。お昼ご飯は楽しみにしていてね」


私はそう言ってターナの頭を撫でていると気持ち良さそうにターナはすぐに眠っていた。やはり眠るのが一番ね。


 私はそっとベッドを離れ、庭へと出る。庭師のサンに育てている薬草を分けてもらい、また厨房へと入る。流石に黙って拝借ばかりしてもダメだしね。


「若奥様、今度は何を作るのですか?」


料理長がまたもや興味津々で聞いてくる。


「ターナはこれから大量の汗を掻くから冷製スープを作るわ、口当たりの良いゼリーはお願いしてもよいかしら?」


私は料理長にゼリーをお願いして野菜の冷製スープを作る。そして薬草と果実を使ったさっぱりとして飲みやすい果実水を作り部屋へと戻る。お昼にはローサが持ってきてくれるわ。


 部屋でソファにねっ転がりながら本を読んでいると、ターナは『あつい』と言いながら起き上がってきた。私は心配しながら用意していた着替えとタオルを持ってターナの身体を拭いていく。


「トレニア、ありがとう。こんなに早く汗を掻いて楽になるとは思わなかった。素晴らしい」

「ふふっ、効き目は凄いでしょう?はい、この果実水。口の中がさっぱりするわ。サンに分けて貰ったの」

「カルの葉か。このままだと苦いけれど、果物の自然な甘みでカバーされて飲みやすい。あぁ、ごくごく飲んでしまった。お替わりをくれるかな?」


私が説明しなくてもターナは見て自分に必要な薬の成分だと理解している様子。さすが専門家の旦那様。


「トレニアの愛を感じる。感動だ」


そうしてまたギュッと抱きしめて二人でたわいのない話をしながら頬を寄せる。


「ターナ様、トレニア様。お昼のお食事をお持ちしました」


ローサはソファに置きっぱなしになっていた本を見つけ、


「ソファでゴロゴロはしたなく過ごしていましたね!?」


とギラリと私を見ている。私は素知らぬ振りをして通そうとしていたのにターナは


「ソファにねっ転がって本を読むトレニアは可愛かった」


と。ローサに小言を言われている側でターナは微笑み座っているわ。


ぐぬぬ、解せぬ。


 小さなテーブルに用意された昼食をいただく。するとまたターナは不思議そうにスープをくんくんと嗅いでいる。


「トレニア、お昼のスープは何だい?」

「ターナが汗を沢山掻くと熱い物は食べづらいと思ったので冷製スープにしました」


ターナはトレニアの説明を聞きながら流し込むようにスープと白パンを食べた。


「美味いな。この薬草達は消化促進、鎮痛、炎症止めの効果があるな。この食べやすさ、そしてこのゼリーで食後の口直し。トレニアが奥さんで良かった。また作って欲しい。幸せを感じる」


ターナは感激に浸っているみたい。


食事を終え、また私達はベッドへ行く。私はターナの側で座り、ターナは私の身体にピタリと身体を寄せて目を閉じた。


そして私はターナの頭をまた撫でる。

たまにはこんな時間もいいなと思う。


二人だけの世界。またこうやって過ごしたいな。




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和風ファンタジー書いてます。こちらの方もよかった読んでみて下さい。

「神々の理(かみがみのことわり)」

https://kakuyomu.jp/works/16818622177024844516

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悪役令嬢の妹ですが幸せは来るのでしょうか? まるねこ @yukiseri

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