第14-2話 人狼ゲームな昼食

「お前は弟や私を助けてくれたが『特別な人達』だ。信用しきれない」


 粂戸くめとたちと離れた席についてから、未縫衣みぬいはジィズマイからもらった水鉄砲のような武器の銃口を和胡わこに向けた。


 和胡たちが座る席は店の奥、粂戸たちどころか他の客からも離れていて気づかれない。

 しかも向けているのは、カラフルな水鉄砲にしか見えず、悪ふざけとしか思われないだろう。

 だが、モップモンスターを簡単に倒す威力を持つ武器。ガリカル以外の者に当たるとどうなるかは知らされていないが、敵意もしくは警戒の意志を伝えるのには十分な効果があった。


『未縫衣さんから見れば町の存続をかけたゲームで。

 何よりも俺…じゃなくて私は、未縫衣さんが目の敵にしている『特別な人達』と判明している。

 当然といえば当然だけど…』


 和胡はふうと息を吐いた。


『さて、どうする?

 というか、今の状況って人狼ゲームみたいだな。人狼の正体を知る私は、人狼だと疑われている占い師(預言者)ってところか』


 未縫衣を説得しなければ敗北の道をたどる。冷静に考えなければならない。


『未縫衣さんは、ジィズマイから渡された端末を操作していたから、ガリカルが4人の中にいると知っている。


 でも、その場で『特別な人達』と確定している私を消したり、粂戸たちに教える事もなかった。


 私がガリカルならば、ホームセンターで仲間を消さないし、ジィズマイから『招かざる客』と言われることもない……警戒しているものの、断定できないって事なのか?』


 そう答えを出し、まだ余裕があると思えた和胡は、にこりと笑みを未縫衣に向けた。


「未縫衣さんが警戒するのは、ごもっともです。

 とはいえ、まずはご飯にしましょう。お店に入ってメニューすら開かないのは変に見られますし」

「…。そうだな」


 未縫衣は武器をしまい、メニューを開いてくれた。

 和胡は心の中で安堵の息をついたが一難去ってまた一難。無難なメニュー選びである。


『注文も注意した方が良いな…下手に高い値段は『特別な人達』感が出て悪影響になる。

 ……って、女子高生が昼食に食べるファミレスメニューは何だろう?』


 休日の女子高生スキンでいる男子高生は、困った時の同じメニュー作戦を思い出した。


『同じメニューを頼むと運ばれてくるのも同じで同時に食事が始められて気まずい空気を避けられる。同じだからこそ出てくる話題もあり、メリットがあると何かに載っていた。とはいえ、ここでは、あくまでも自然に』


 和胡は心の中で頷き、メニューを数ページめくってから未縫衣に話しかける。


「色々あって毎回、悩むんですよね、未縫衣さんは何にしますか?」


 何気なく未縫衣のメニューに視線を向けると、スイーツページが開いていた。


「私はファミレスに行ったら好きな物を我慢しないで食べるというマイルールがある。

 くめとや姉さん(さらに姉がいるらしい)が近くにいない時は特にだ」

「……」

「私は、蜂蜜たっぷりのミックスベリーパンケーキとドリンクバーのセットにする。和胡はどうする?」

「…。えーと、私も甘い物が食べたい気分なので…ダブルチョコとベリーのパンケーキとドリンクバーを」


 『肉が食べたかったなぁ』と心でつぶやきつつも、好物は外さない和胡は呼び出しのベルを鳴らした。




「私は考えていた」

 

 未縫衣は3分の2ほどとパンケーキを食してからフォークを置いて和胡を見る。


「和胡、お前は私が敵とする『特別な人達』だ。だが、今回の敵ではないのかもしれないと……でも……」

「えと…『今回の敵』というのは?」

「……。今回の敵は今回の敵だ」

「……」


 未縫衣を取り巻いている状況を知っている和胡は、未縫衣が『今回の敵』はこの中にいる裏切者ガリカルだと知っているのだが、ただの『特別な人達』として、未縫衣に質問してみた。

 ガルガリの事を話してくれれば、信用の度数が良いとわかっての発言だったが、まだ、甘くはないようだ。


「和胡が『今回の敵』ではないという信用が欲しい。和胡は和技わぎの従兄弟だと言ってたな、本当に従兄弟なのか調べる」

「調べる…と言っても通信障害中だからスマホは繋がらないし、和技君は見つかってませんよ」


 途中で再会した やふら も和技は『見ていない』と言った。現場を目撃していない和胡でも、やふら もしくはガルガリに消されたと推測できる。


「本人がいなくとも、私の記憶がある」

「記憶?」

「和胡が知っている和技の記憶と私が知っている和技の記憶が一致すれば、和技を知る者と証明ができる。だから和技の事を話せば良い。記憶じゃなくとも癖や仕草」

「………」


 休日の女子高生スキンに変えた和技は、自分の事を語らなければならないハメになった。








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