第14-1話 話を整理すると

 ガリカル達を倒さないと基他きた新町は消去されてしまう。


 この世界が、プログラムで出来た架空世界という秘密を知らない『普通の人達』の話である。

 世界の秘密を知っている『特別な人達』の和胡わこは声に出さず、今の状況を整理した。


『基他新町は、クラスCやDといった魂を持たないプログラム住人の町だから、消去されても再起動するだけの話。

 綿山車わただしたちも、本当の身体は本当の世界で大切に管理されていて、命をおびやかす事はジィズであっても不可能だ。

 基他新町にいた記憶は消される…というより、モップモンスターという現実世界に存在しない生物を見た時点で、俺が修復士という立場から報告しなけれぼならない。どっちにしても基他新町での記憶は『普通の人達』全員 削除される。

 残酷そうで安全に管理されたゲーム。まさしく余興…なんだよな』


 しかし何も知らない『普通の人達』にとっては町が消されるという一大事なのだ。


「……」


 和胡は前を進む綿山車 姉弟の背中を見つめる。

 町が消されるという混乱と、モンスターを倒せるのかという不安。粂戸くめとに至ってはモンスターが人を飲み込んでいるのを目撃しているので恐怖心もある。

 でも『何とかしなければならない』そんな空気が読み取れた。


『この前みたく、これは夢だと信じこませることができれば、2人とも気楽になれたのに』


 和胡は、その方法を阻止するであろう、粂戸の隣にいる もう1人のクラスメートをちらりと見る。

 粂戸の仲良しグループの1人である やふら は、ジィズマイが姿を消した後、バックヤードから現れて無事に再会する事ができた。


「………」


 未縫衣みぬいは無意識でホームセンターに瞬間移動したと言っていたので、基他新町に行くと聞き、ホームセンターに向かうのを見かけたという やふら の発言は嘘になる。


『ホームセンターに誘導した時点でガリカルの1人に間違いないだろうな…でも、なぜ粂戸を基他新町に向かわせたんだろう?』


 彼の思惑は分からないが、分かることはある。

 和胡を良く思っていない事。彼から見ればガリカルの行動を阻止しようたする敵になるのだから。

 ジィズマイとの会話を聞いていれば、和胡が やふら を疑っていている事も気づいているだろう。


「……」


 粂戸の隣にいる やふら が振り返り、ちらりと和胡を見る。和胡の可愛い外見に惑わされない警戒の目。


『もしかしたら、俺が棚島たなじま 和技わぎだとバレているのかもしれないな…』


 やふら はすぐに視線を粂戸に戻した。

 和技より粂戸と仲良しな立場にいて、何よりも『特別な人達』だとバレていないのに、優越的な表情はなかった。


『ジィズマイに『寄せ集め』宣言されて、やる気のない奴らとはいえ一瞬で消して踏みつけたからな。おまけに余興の材料までにした。

 クラスZ(犯罪者)のボスであるジィズの気まぐれかもしれないが、やふら も窮地に立たされている』


 考えをまとめた所で和胡は視線を空に向ける。


『安全な余興とはいえ、俺は勝たなければならない』


 決心した視線は前を歩く3人に少しだけ距離を詰めた。





 一行はホームセンターを出て目的地に向かう。


 昼食を食べに


 というのも、やふら と再会した直後に未縫衣に渡した端末から通話の着信音が鳴った。


「あ、もしもしー。ジィズマイなんだけれども、今から1時間のお昼休憩ね。

 君たちもガリカル達もお昼ご飯をちゃんと食べてね。その間に襲撃しちゃだめだよ。ルールを破ったら瞬殺だから。

 あと、ルール追加。

 この端末は みぬちゃん以外触るの禁止。こっちも破ったら瞬殺ね」


 勝手に言いたい事を伝えて切られた。


『未縫衣さんしか触らせない。端末にはガルガリの居場所がわかるから、やふら がガリカルなのを未縫衣さんだけに教える事になる。

 ジィズかジィズマイは、この中にガリカルが1人

混じっていることに気づいた未縫衣さんがどうするか、面白がっているのだろうな…』


「いらっしゃいませ、4名様ですね」


 ホームセンターから出て目についたファミレスは昼時を迎えているが、思っていたよりは空いていた。


「いや、2人と2人だ。」


 さっそく未縫衣が動きだした。


「私は和胡と2人だけで食べる」


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