第3話 地区大会

 ミン~ミンと、蝉の大合唱が、目覚ましとなっていた。

 俺は、洋一の両親から聞いた話を洋一にすることが出来ずにいた。

 そして、その話を聞いて以降、いつも通り生活しているが、互いの会話やスキンシップすら無くなっていた。

「洋一?大丈夫?元気無いけど?」

 って、周りから言われても、無言か暴れて物を破壊するなど、普段の洋一とは違う姿にチームメイトは、びっくりしていた。

 だが、一度、プレーのかけ声を聞いたらそこは、野球人。やはり、いつもの洋一だった。

 そして、地区大会。

 初戦は、洋一と俺のバッテリーで、完封勝利。

 2戦目は、監督の意向で、洋一と俺は、ベンチスタートだった。

 どうやら、1年バッテリーの実力を見たいとのことらしい。

 山際投手-倉橋捕手のバッテリーは、同じ中学だったらしく、中学最後の大会で優勝した選手とのことだった。

 そんな2人なら、なぜ?名門へ進学しなかったのか?と疑問になり、聞いてみたことがある。

 彼らの答えは、親の意向と本人達が、野球をもっと広めたいという思いに感銘したうちの校長の願いによるものなんだとか。

 毎年、2戦目で敗退しているうちのチームだが、一応と言っては失礼かもしれないけど、野球部OBで、プロ野球へ行った選手はいる。

 今の学校の校長、北角華世の祖父である。

 名を、光男という。

 北角光男は、戦前のプロ野球に入団したのだが、チームが解散してしまい、別の球団に。3年所属したのち、社会人で2年プレー。

 そして、35才で、北角学園を創立し、

 85才で、昨年亡くなった。

 話は逸れたが、山際投手-倉橋捕手も親は、プロ野球選手だった。

 山際の父は、通算200勝した投手で、殿堂入りした投手だった。

 倉橋の父は、通算打率こそ2割だったが、

 安定した守備で、日本一8回を経験した捕手だった。

 そんな有名選手の息子だけあり、5回コールド勝利だった。

 そして、迎えた3回戦。

 相手は、強豪チームだった。

 5対2で、リードしていた8回裏、甘く入ったストレートを打たれて、2人帰って、一点差になる。

 アウトカウントは、2アウト。

 監督は、お疲れさんと声をかけて、山際と倉橋は、ベンチへ。

 変わって入ったのは、俺と洋一だった。

 3年である俺達が締めると意気込みでマウンドへ。

 3アウト目を三塁手が捕り、1塁へ投げて、8回を抑えた。

 9回の表。

 俺は、打席に立った。

 結果は、三振だった。

 その後、洋一が打席にて、相手のカーブを打ち、二塁打とするも、後続倒れて得点ならず。

 迎えた9回裏。2アウトで、ランナー1塁。

 カウント2ストライクと追い込み、決め球のスローカーブを投げた。

 だが、俺の投げた球は、歓声と共に、スタンドインだった。

 勝負しにいって打たれた。

 高々上がる打球を見送る暇も無く、ただそこに立ち尽くしていた。

 試合終了の声と握手をし、俺達の夏が終わった。

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