壊れた星の直し方(7)

 辻占は効率主義的な一面がある為、所々冷たく感じることがあるのだが実際はそんなことは無いということを俺は知っている。前に部長から聞いていたのだ。


 部長には人の特性を深くまで見抜く『眼』がある。聞き慣れた言葉で言い換えれば、人を見る目があるということだ。


 部長が信頼している人だから、俺も信頼できる。そう言う意味ではうちの部長は非常に頼り甲斐のある人物だと言えるのだが……


 辻占に案内された俺達は、天球儀の周りをぐるりと一周して裏側に回る。するとそこには、俺と同じくらいの大きさの物体に黒い布がかけられた何かがあった。


「今回君たちに頼りたいのは他でもない、これなんだ」


 そう言って辻占はその物体を覆っていた黒い布を取る。すると姿を現したのは、立派な天体望遠鏡だった。


 しかし足は折れ、本体の首も下を向いてしまっている。素人目から見ても明らかに故障していると分かる。


「……これは?」


鹿子が訊ねる。


 辻占は鏡筒本体をなでるようにしながら答えた。


「見ての通り、天体望遠鏡さ。今は壊れて使えないけど、これでも一昨日までは普通に使えていた筈なんだ」


 鏡筒をこちらに向けると、レンズまでもが無惨に割れていた。なるほど、三脚などの他の部品ならまだしも、これじゃあ使いようが無い。


「昨日の放課後、古賀が見つけて知らせてくれたんだ」


 辻占が古賀の方を見て言うと、古賀は何故か少し申し訳なさそうな表情をして俯いた。


「本当ならば第一発見者なんてなりたくはないだろう。間違いなく面倒事に巻き込まれるし、もしかしたら壊した犯人だと自分まで疑われることにもなりかねない。

 嫌な役回りを引き受けてまで伝えてくれたことに感謝するよ」


 辻占の目は優しく、本当に怒っては無いのだろう。古賀はまんざらでも無さげな表情だ。


 それに確かに、この望遠鏡の壊れ具合は明らかに人間の力が加えられている。どんな管理状況だったかは知らないが、一度倒しただけでここまで派手に壊れるとは思えない。


 しかしそれは部長……いや、この場のほとんどが思っていたことらしく、


「この壊れ方、明らかに事故じゃないですよね。人為的に壊されたとしか思えないのですが」


 と言ったのは夏穂だった。


「誰の仕業か分かりませんが、とりあえず先生に言った方が良いと思ったのですが……」


 そう言ったのはクラスメイトの男子部員。名前は確か……狩内君だった気がする。すまない、興味のない人の名前を覚えるのは得意じゃないんだ。

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