壊れた星の直し方(6)
「やあ、来てくれたね。赤服と文学部の諸君、待っていたよ」
その人は底の見えない不思議な笑みを浮かべながら、言葉では俺達文学部を歓迎する。
「時間通りね」
「ああ、問題ないよ」
部長が答える。そのいつもとは違う口調、それから場の張りつめた雰囲気から察するに、今回の案件がそこそこ重大であることを反射的に悟った。
そしてこの、部長と対峙している人物こそが星占学部部長、六大老『北極星』、辻占清華その人であった。
細身で肌が白く、髪色は黒でショートヘア。そのコントラストと口に絶えず浮かんだ微かな笑みが相まって、常時ミステリアスな雰囲気を醸し出している三年の女子生徒だ。
北極星というのは、本校の某かが付けた辻占の二つ名である。六大老と同じく、これもまた提唱者は不明。
しかし北極星という二つ名の由来は何となく分かる。
この辻占という女、見た目からするとあまり組織の音頭を取るのが得意なようには見えないが、それは大きな間違いである。
流石に部長のように学校全体を動かすような規模ではないにしろ、辻占のカリスマ性もなかなか侮れない。むしろある意味では、うちの部長よりも、集団を纏めることに関して絶大な力を誇ると俺は思っている。
星占学部は勿論のこと、所属するクラスでは学級委員を務め、更には行事運営委員会の委員長をも務めている。
彼女が本気を出せば生徒会長になっていたとしてもおかしくは無いという意見だってあるほどだ。
しかし、赤服部長は皆の前に立ち扇動するようなやり方に対し、辻占は組織の数人の人心を掌握し、そこを起点に行動を起こさせるようなやり方を主とするため表舞台に立つことはそこまで多くない。
その証拠に研究の校内表彰の際にも実際に舞台上に立っていたのは他の部員だった。
あまり目立たないところに居るが、中心となって周囲を大きく動かす。彼女の北極星という二つ名にはそんな意味が込められているのだと思う。
「早速で悪いんだけど、用件から先に話させてもらうね」
辻占は俺達を一瞥すると、歓迎もそこそこにさっと切り替えて本題に入った。
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