逃げる後輩のシバき方(5)
結局、自習室で勉強して暇をつぶすことに落ち着いた。
これならば面倒な輩に遭遇することもないだろうし、第一今日は数学の内容が全く頭に入ってこなかった。苦手教科も勉強するなんて真面目だねー……無論そんなことは無い。
一年の頃の数学の成績はⅠ、A共に評定2だった。今度こんな成績をとったら親になんて言われるか分かったもんじゃない。
ワーク類を詰め込んで重くなったスクールバッグを持つ。
さて、自習室に向かうとしましょうか…………
「失礼! 初狩蘇雨君はまだいるかしら」
実にはっきりとした素晴らしい女子生徒の声が、教室前方から響く。そして声の主は俺の名を呼びつけていた。
俺は返事をしないが、勿論聞き逃したわけでは無い。
うわぁ……ついに来やがった
俺はとっさに机の影に身を隠しながら、その人物とは反対の教室後方のドアを目指す。
「……ねえ、生徒会長よ」
「……ほんとだ。今日もかっこいいなあ」
「……おい、お前声かけて来いよ」
「……はぁ? 無理に決まってんだろ。恐れ多いわ」
周囲では、参上した人物をまるでスーパースターかのように崇め奉る人々の囁き声が聞こえる。
そう、俺を呼びつけたあの声の主は本校生徒会会長、
身長は158cmで、髪はミディアムロングのブラウン。
そして慈愛を象徴するかのような優しい目は、見る者全てを惚れこませる謎の力を持っている。それはある意味、一種の超能力だ。
まるで文武両道、才色兼備の二言を体現したかのような人物で、恐れしらずな性格の上に、誰でも分け隔てなく接するその慈愛に満ちた態度から「天上神」の称号を欲しいままにし、俺が入学してから今も尚、全生徒の頂点に君臨している。
欠点として挙げるならば、それは何の突っかかりもないすっとんとんなボディだろう。
現在も教室の出入り口で菩薩のような、聖人すら超越した態度で佇んでいた。
そう、菩薩のような態度で。
……天上神であるのに俺が菩薩と表現した理由はそのうち分かる。
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