第22話 ライバル
「もう、さやか。私店長ともう少し話したかったのに!」
園子は学校に着いてもまだ怒っていた。
(やばい、やばい、あなたとコウちゃんをあまり長く話させると、何が起きるかわからないから、絶対にダメ!)
さやかは口に出してそのままは言えないので、かなりやんわりと言った。
「ダメだよ。あれ以上話してたら遅刻しちゃうところだったよ。」
「うそだー。もう1本ぐらい電車遅らせてても絶対間に合ったって、いや2本は行けたはず。」
園子は納得できないでい様子でいたが、急に何かを思い出した様で表情を変えた。
「そうださやか、さっき店長がさやかに向かってなんか変な言い方してたよね。あれ? 何て言ってたの? さやか覚えてる?」
急に話を西川とさやかのことに向けてきてくると、さやかは内心で思った。
(はい来ました。やっぱり聞こえてたんだ。でも園子の記憶力が高くなくてよかった。なんて言ったかまでは覚えてないんだ。それにしてもコウちゃん気を付けてくれないと困るよ!)
安心したり、怒ったりさやかは自分がコウちゃんと言いかけたことは忘れて、そんなことを思ってしまい西川に対して少し腹を立てていた。
「そう言えば、さやかも店長になんか変なこと言ってたような?」
「えっ!」
(やば、私もなんか言っちゃてたのかな? 全然覚えてないけど・・・。)
「何のこと、気のせいだよ。はい授業始まるよ。席に着こう、席に・・・。」
さやかは誤魔化しながら、園子を急がすように自分の席まで引っ張ていった。
(なんなんだ、疲れる! 別に私とコウちゃんはまだ何も・・・。)
等と考えてしまい顔を真っ赤にしていた。
「わかったよ。ねえさやか、今日学校帰りに駅前のカフェに行かない? 今日バイトも無いしさ、ねえいいでしょ。」
さやかに連れられ渋々席に着くと園子は、何故か急に放課後のお誘いをしてきた。
「別にいいよ。」
さやかは自分の頭の中も色々なことが渋滞していて、何も考えられる状態ではなかったようで軽く答えていた。
「私はフルーツパフェにしようっと、さやかは?」
「私はえーと・・・。」
さやかがメニューに迷っていると、急に大きな声で園子はふたりの席のそばにいた店員に注文していた。
「すみません、フルーツパフェ2つお願いします。」
「ちょっと、私まだ決めてないのに!」
さやかは少し語気を強めていうと、悪びれる様子を全く見せずに園子は言ってきた。
「だって、早く話したいことがあったから、仕方ないでしょ。」
「じゃあ何? 何を私に聞かせたいの?」
「まー焦らないで、パフェ来てから話すから。」
水を飲みながら園子は答えていた。
(なんだよ。じゃあ急いでないならメニューまだ見てたって良かったじゃん。)
さやかはそう思ったが、自分も水を飲んで園子に向かってわざとらしい笑顔を作って見せていると、注文したパフェはすぐにふたりのテーブルに運ばれてきてた。それを目にして園子は目をキラキラ輝かせながら、スプーンを手に取ってすぐに食べ始めた。
「いただきます。」
「ねえさやか、店長のことどう思う?」
園子はいきなりさやかに聞いてきた。
(えっ、これって何か知ってるってこと? それとも何かわたし試されてる?)
さやかは動揺しながら、単純な疑問として聞き返した。
「それってどういう意味なの?」
「私ね、店長のことちょっと気になるんだよねー。」
園子から意外な言葉が返ってきて、思いもよらない言葉を耳にしたさやかは動揺を隠すように冷静を装って聞いた。
「何それ、気になるって、好きってこと?」
「違う、違う。好きなんて言ってないでしょ、気になるって言ってるのよ。さやかちゃんと聞いてる?」
「えっ、気になるって好きとは違うの?」
さやかは少し前のめりになっていた。
「全然違うでしょ。まー、私もよくはわからないんだけど、今は気になるって言う言葉がピッタリ合ってるような気がするんだよ。」
いたって真面目に園子は答えると、さやかはやんわり否定的に言った。
「でも、店長と園子じゃ、ずいぶん歳の差あるよね。それに店長ってよくわからないし、どうかなって思うけど。」
(私と園子は同じ歳だから、コウちゃんとの年齢差は当たり前だけどいっしょなんだよな。自分のことじゃないと思うと、これって普通に考えたらやっぱりおかしく感じちゃうな。でもなあ・・・。)
「いや、店長は絶対にいい人だよ。優しいし、話してるとなんかこう包み込んでくれるような優しさを感じるんだよねー。」
園子は両手を大きく広げて自分自身を抱いていた。
「さやかはどう思う?」
「そうだね、多分店長はいい人だね。」
さっきの否定的な言葉から一転して園子と同じことを言うと、園子はわざと悪戯ぽっい目をしてさやかに顔お近づけてきた。
「じゃあ、もし私が店長のことを好きになったらどうする? 多分さやかのライバルになっちゃうと思うんだけど・・・。」
「そうだね。じゃあ、ライバルになるのかな。」
さやかは真顔で答えた。
「嘘だよ、嘘。好きになるかどうかはわからないし、だってそうでしょ。人を好きになる時って、どのタイミングになるかなんて誰にも分らないもんね。」
園子は椅子に深く座り直して目の前のパフをおいしそうに口に運んでいつもの園子に戻っていた。
「あれ? 今ライバルって言った? ってことは!」
園子は口に運ぶ動きを止め再び前のめりになってくると、動揺を隠すように笑顔を作ってさやかもパフェをひと口美味しそうに口に運んでいた。
「嘘だよ、嘘。そう言った方が園子が驚くと思って。ほら驚いたでしょ?」
(やばい、やばい、もう園子、何考えてるんだ・・・?)
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