キャスィーと鷹野


 キャスィーは源泉中の校庭に出てパイプ椅子に座り、ため息をついていた。タルトが肩に止まり、「どうしましたか?」と聞く。

 「私は15歳で日本に来て、『音楽祭』に参加した。亮介先生や美月先生と同じ高校の後輩で、『音楽祭』ではネモフィラの形のバタークッキーやブルーベリーアイスクリーム、サンドウィッチを売ったわ。

 でも、二人の熱唱を聴いていたら涙が出てきたの。『私の好きなことって、何だろう?』って自問自答しながら、二人に拍手を送ってた。


 源泉中の1階に貼ってあった『リート新聞』を破かれた時、失神してカウンセリングルームに運ばれた。新聞の裏には『日本から出ていけ!』って青いペンキで書かれていた」


 泣き出したキャスィーの肩を後ろからたたいたのは温泉小体育教師の鷹野だ。「鷹野先生!」驚くキャスィーに紺色のハンカチを渡し、顔を赤くしながら温泉小へと

戻っていった。

 コミミズクのクローディアが「(鎌倉警察署では秋次郎や他の警察官たちが小中学生や高校生、大学生たちと『リート新聞』を読んで漢字勉強をしているの。

 スマートフォンやパソコンで見ている漢字が書けず、驚いてる人が多いから)」

とキャスィーの肩をたたいた。

 



 ―――夜6時。源泉中職員室で『リート新聞』を作り終えたキャスィーは校門を出て鎌倉駅へと向かっていた。

 灰色の半袖シャツと茶色い長ズボンを着た男が、「日本から出ていけ」と言いながらキャスィーの首を絞めようとする。

 クローディアが激高し、かぎ爪で男のあごひげを引っ張る。「キャスィー先生に何しやがる!」逃げようとする男に鷹野が怒鳴り、腰を打ち失神させた。


 

 地面に倒れ込んだキャスィーに鷹野が駆け寄る。「キャスィー先生」と呼びかけられ体を起こすと、鷹野が笑みを見せた。

 キャスィーは鷹野と一緒に改札口を抜け、横須賀線に乗る。車内には単語帳を見ている信也や、リュックサックから出した小説を読んでいる武雄たちもいた。


 「俺は『リート新聞』に載っている曲をカラオケ店で熱唱しています。漢字が書けなくなっていましたが、温泉小の職員室や自宅で『リート新聞』を読み漢字を暗記

してるんです」

 「ありがとうございます、鷹野先生」キャスィーが嬉しそうに言うと、鷹野は顔を

赤くしながら彼女の肩に手を置き横浜で一緒に降りた。


 自宅の居間では紺の首輪をつけたメスの愛猫、ツユクサがソファーに座っていた。「ツユちゃんただいま」ツユクサはキャスィーの持っている紺色のハンカチの匂いを

かいでから腹の上に乗り、「アーン」と鳴く。

 キャスィーはハンカチをネモフィラが描かれた紺色の肩掛けカバンに入れ、愛猫の

背中をなでてから寝た。


 鷹野とキャスィーは休日に一緒に過ごすことが多くなり、映画館や本屋に出かけて

いる。



 

 



 

 

 


 

 

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