ドラムとライブ


           


 11月3日、温泉小。6時間目の国語の授業を終え音楽室に来た亮介はドラムの前に座り、たたき始める。18歳で聡たちと出会いロックバンド『紫いもタルト』のメンバーとなり、プロのドラマーとして10年ドラムをたたき続けてきた。

 熱唱し、叫びながらドラムをたたき終えると、廊下で聴いていた博人や拓也たち5人が拍手をした。

 亮介は「ありがとう」と答え、開けていたワイシャツのボタンを閉める。英会話を終えた賢人と4週間ぶりに学校で授業を受けているひかり、ひなたも音楽室に入って来た。


            

 「賢人。『とんかつ弁当屋 清水』にいる茶色い柴犬、ロースと小町通りを散歩してたな」「ロースは弁当の前に値札をくわえて置くんです」賢人は嬉しそうにそう答え、『紫いもタルト、30分のライブ』と書かれた黄色のチラシを見る。

 「12月2日の午後3時から、温泉小学校の昇降口前でやる。小学生10人までで、カイロとタオルも配るからな」

 「純一と美奈にも、このチラシ渡してみます。ライブ好きですから」と言って、博人はチラシをリュックサックに入れ賢人たちと一緒に下校していった。


 当日、午後3時。温泉小の昇降口前に置かれた椅子には両手にアルコール消毒液を付け終えた賢人、純一、美奈と博人、桃、直美、ひなたとひかりが座っていた。

 聡や亮介、バンドメンバーの一人でビリビリグッズを集めている茶色い短髪で18歳の水原真がカイロと5つの紫いもタルトが描かれたタオルを8人に渡す。

 「ライブの間はこのタオルとカイロを振って、曲を聴きながら体を温めてくれ」マイクを置き、亮介がドラムをたたくと、聡や真たちも歌い始める。

 タオルを振る8人の近くで、40代の男が亮介を見つめていた。『紫いもタルト』のライブ会場にビールの缶を40回投げ入れ、マイクを折ったことがある。


 ビールの缶を亮介に向かって投げようとした時、ガラスの割れる音が会場に響いた。背後から薄茶色の頭と黒い目を持つムートが近づき、かぎ爪で男が着ているウインドブレーカーのひもを切る。

 インコのタルトが、「亮介たちのライブにはファンが多い‼」と言いながらガラスの割れる音を出し、冷や汗をかく男を地面に座り込ませる。

 「(あんたみたいな男、嫌いなのよ‼)」「(ビールは家で飲んで‼)」コミミズクのクローディアにかぎ爪であごひげを引っ張られ、ムートに空っぽのビールの缶を腰に当てられた男は悲鳴を上げ会場から出て行った。


 ――――ライブ後。「タルト。ガラスが割れる音に博人たちも驚いてたんだぞ」校門前で亮介が肩に止まったタルトに言うと、「『ビールの缶投げ男』が小町通りで逮捕された」と聡が新聞を見る。

 椅子を片付け終え校門から出ていく博人たちが、亮介や明人に手を振り笑みを見せた。


 

 

 


 


 

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