大人編 亮介と美月

         

            


 美月は博人と桃たちにテストを返し終え、連絡帳に明日の持ち物などのメモを書いていた。

 校門を出て小町通りに入り、『とんかつ弁当屋 清水』でロース弁当を買った直後、彼女の後ろに並んでいた赤パーカーを着た黒髪の男、白木直人に頭突きされ、紫色の車の座席で失神した。

 「Wait!(待て!)」ベルは直人に向かって怒鳴り、公衆電話でライブハウスにいる明人に連絡を入れた。



 娘の直美と一緒にライブハウスの2階に来て報告をしていた亮介の肩を、明人がたたく。「亮介。ベルから美月が赤パーカーの男の車に乗せられていったという電話だ!」亮介はトウジとベル、アーノルドと小町通りに向かう。

 聡と明人は泣きそうな直美に「お前が生まれて父親になってから、亮介は前向きになった」と言いながら笑みを見せる。


            

 直人はホイッスルの形になり激怒した20匹の女王バチに悲鳴を上げ、車はアイスクリーム屋の前でタイヤが一つはずれたまま停まっていた。

 美月は車内で古本屋のオスのメンフクロウ、ムートにくちばしで肩を軽くたたかれ目を覚まし、直人が着ているパーカーのひも2本が車内に落ちているのに気づく。

 「あなたが切ったの?」「(こいつは美月さんを連れ去ろうとしたから)」ムートは古本屋で捕まえたネズミ2匹を食べ終えた。


 アーノルドが直人を取り押さえ、亮介は車のドアを開け美月、彼女の肩の上で首を回しているムートと一緒に外に出る。

 「熱中症です。体温を下げないと」とベルが言い、両手をせっけんで洗ってからライブハウスの階段を上がり、2階に入って美月の首に冷やしたタオルを巻く。

 

 ベルはソファーから体を起こした美月と一緒にレタス、黒コショウを入れたサンドウィッチとブルーベリーヨーグルトを食べる。

 「ムートは私と亮介の結婚式にも出てたんです」「フクロウのあくびを見ると、笑ってしまいます」二人が話していると、直美と亮介が部屋に入って来た。

 ムートが亮介の肩に止まり、あくびをする。「ママ、今お昼?」

 「うん」と答え、美月はサンドウィッチとヨーグルトを食べ終えた。(亮介はムートを肩に乗せ読書)。

 ベルは冷やしていたゼリー飲料を美月に渡し、直美とムートに手を振りながら帰っていった。


 「美月、おかえり。ロース弁当を食べ終わったら、俺の本棚がある2階に来てくれ」と亮介に肩を軽くたたかれ、美月は容器をビニール袋に入れ階段を下りていった。


 2階に入ると、椅子に座った亮介が白く四角い箱を持って待っていた。「開けてみてくれ」箱を開けると、真ん中にそれぞれ銀色の三日月が刺繍された黒い手袋が出てきた。

 驚く美月に、亮介は「職員室で編んだ」と笑みを見せる。手袋をはめると、丈夫に編まれている。「ありがとう」と言いながら夫の肩に手を置いた。






 

 








 

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