第12話初めての飯
「お待ちしておりました凪様、こちらにお座りください」
「あ、うん」
ロティの言う通りに指定された椅子に座った凪、。それを確認したロティはおそらくキッチンであろう所に入り、昼食を持ってリビングへと戻ってきた。
凪はこの世界に来て初めての飯だがロティの持っている昼食は何でできているかわからないが、見た目は普通においしそうだった。
昼食を凪の前へと置き、ロティは凪の後ろでずっと立っていた。そんなロティに凪は少し気まずくなっていた。
「あ、あの…」
「何でしょうか?」
「なんで俺の後ろで立ってるの?」
「これが私の仕事ですので…」
「そ、そうなんだ」
ロティにそう言われてしまっては何も言えなくなった凪、自分が聞いたことによってさらに気まずい雰囲気を生み出してしまった凪。これでもかというぐらいに目の前の飯にかぶりついた。
「う、美味い…」
「それはよかったです」
「……」
凪が発する言葉に後ろで答えてくれるロティだったが、やっぱりこの状況に慣れない凪は立ち上がってロティの方を向いた。
「ど、どうかなされましたか凪様?」
そう言ったロティは突然立ち上がった凪に少し戸惑ったようだった。
「ロティはいつ昼食を食べてるの?」
「私は誰かいらっしゃる時はその方が食べた後に一人で食べていますね」
「…じゃあこれからは一緒に食べてくれないかな?」
「…え?」
「俺の世界では飯は一人で食べるよりも複数人で食べたほうがおいしくなるみたいなんだ」
そう言った凪だったが、前の世界で家族以外と一緒に飯を食べたことなんてなく、中学生になってからは家族とも一緒に食べることなんてなくなった。それくらい一人が好きだった。
ロティに一緒に食べようと提案したのも、ずっと後ろで見られているよりましだと思ったからだった。
ロティは少し考えるようにうつむいた。そんなロティを見て、今まで誰ともコミュニケーションをとってこなかった凪は、何か地雷を踏んでしまったのではないかと思ってしまった。
「ご、ごめん。無理に一緒に食べてほしいわけじゃないから…」
「…いえ、それが凪様のご要望であるなら、私も今度からご一緒させていただきます」
「あ、そう。わかった」
結局、ロティが何を考えていたかわからない凪だったが、とりあえず食事中ずっと後ろで見られることがなくなったことに安堵した。しかし、逆に今度からは向き合ってロティと飯を食わなければいけないことに、また憂鬱になる凪だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます