第二章/接触 [交流]第4話‐3

 女性陣との待ち合わせの場所であるショッピングモール奥の広場で、マコトとユウヤはベンチに並んで座りながら、近くのジュースパーラーで買ったジュースを飲んでいた。

「うまいじゃないか!流石、給養部長のお墨付き。」

選んだキウイジュースに舌鼓を打つユウヤの横で、マコトは頬を綻ばせながら美味しそうにストローからオレンジジュースを飲んでいる。ノブヒトは隣のベンチから二人の様子を見て笑いながら、自分も買ったグレープジュースを飲もうとストローの口をつけた。

 女性陣と別れた後、男性陣は教材を探すために本屋へ向かった。予想通りだったが、本は英語で表記されておりその殆どが娯楽用の本であった。ノブヒトは本屋中の棚という棚を見て周り、苦心して何とか教材となり得そうな本を探し当てた。

「まぁ・・・後はお姫様に聞いてみて、技州国の教材を借りるしかないね。日本史は・・・持ってなさそうだよね。諦めよう。」

ノブヒトは残念そうにがっくりと肩を落とす。

「?先生が覚えている範囲で教えられないのか?」

ユウヤの疑問に、ノブヒトは首を横に振った。

「教科書あってこその勉強だもの。それにボクの記憶違いもあるだろうし、間違った知識を教えたくないからね。教師の沽券に関わるよ。」

そう力なく笑った後、ノブヒトはかき集めた本を手に会計へと向かった。マコトも何か読める本はないかと探したが、ある程度英語は出来るものもやはり英語のみの本はハードルが高そうだったので、購入を諦めた。

本屋を出た後、まだ時間がありそうだったので四人はゲームセンターへと足を運んだ。ロボットを動かすアクションシューティング、様々なキャラを動かす格闘ゲーム、銃を持って画面の敵を撃つガンシューティング等、日本でも馴染みのあるアーケードゲームが置いてあった。だが、そもそも年齢の割にあまりゲームに興味のないマコトとユウヤにはチンプンカンプンで、試しに触ってみたものも操作がおぼつかず、直ぐに飽きてしまった。正反対にノブヒトはまるで子ども見たいにテンションが上がり、年甲斐にもなく夢中になって‐周りから少し白い目で見られながらも‐様々なゲームをプレイしていた。が、流石に疲れたのか40分程で「目がしょぼしょぼする。手も痛い・・・」と言ってバテてしまった。そして、休憩しようと広場へと戻り、今に至る。

 ユウヤはジュースを飲み終え、近くに置いてあるゴミ箱にジュースのカップを捨てた。

「上手かったな。もう一杯貰いたいくらいだ。」

「そうだね、まさか宇宙で果物の生ジュースを飲めるなんて思わなかったよ。あ、ジュース屋の隣にあるクレープ屋も気になるねぇ。」

ノブヒトの言葉に頷くマコトとユウヤ。穏やか空気が三人の間を流れ始める。

「・・・呑気な奴らだ。」

その空気を壊す様に、苛ついた様子でアーシムが口を開いた。ユウヤはアーシムを睨みつける。アーシムは背中を預けていた街灯から離れ、三人に近づく。

「この艦の目的も、アキレア様の崇高な考えも理解せず。ただ、目標を一目見たいと言うだけで、何も考えていない。本当に反吐が出る。」

アーシムは三人の前に立つと、蔑む様に見下ろした。

「今回はアキレア様の指示と、貴様等が害を為さないか監視の為に着いてきただけだ。正直、貴様等がどうなろうと知ったことではない。逆に、この作戦の邪魔になるから消えてくれたらとも思っている。」

まるで汚物を見る様に心底嫌そうな表情をアーシムは浮かべる。ユウヤは視線を外さず、アーシムを睨み続けている。いきなり敵対意識を向けられ、怯えた表情を見せるマコト。

「・・・そんな思いを抱きながらも、それでもボクたちについてきてくれたんだ。ありがとう。」

そんな中、ノブヒトは笑顔を崩さず感謝を述べた。アーシムは突然の感謝の言葉に驚きつつも、嫌悪感と怒りが満ちた表情でノブヒトを睨みつけた。

「嫌味か?直ぐにその口を塞いで、作戦が終わるまで独房にぶち込む事も可能なんだぞ?」

睨みつけるアーシムと構わず笑顔を崩さないノブヒト。肌に刺さる、ひりついた空気が流れる。

「お待たせ!って、あれ?なんかあったの?」

明るい声が、四人に流れていた嫌な空気を破った。手を振るアキレアを先頭に、女性陣とアレックスが買い物から戻ってきた。アーシムは急いで表情を取り繕い、アキレアに向かって頭を下げた。

「いえ、ご心配なさる事は何も。少々立ち話をしていただけです。」

アーシムの答えにアキレアは「そう・・・」と呟くと、アーシムの肩に手を置いた。リリィは何か察したのか、男三人に向かってペコペコ頭を下げている。

「仲良くしていたのであれば良いのだけど、あまりお客様を怖がらせる様な事を言っちゃだめよ?」

「分かりました。」と返事をし、頭を上げるアーシム。その後、目線だけマコト、ユウヤ、ノブヒトの方を向き、再びあの嫌悪感と怒りに満ちた目で睨みつけた。

「さて、これでショッピングモールを堪能出来たかと思うけど・・・スズネ?どうしたの?」

スズネは、マコトとノブヒトが飲んでいるジュースを興味深々に見ていた。

「アハハ、ごめん。二人が飲んでいるジュースが美味しそうでさ。」

マコトが飲んでいるジュースを指さして申し訳なさそうに笑うスズネ。その返事にアキレアは呆れて肩を竦める。

「けど、そうね。買い物で疲れたと思うから、ここら辺で休憩とかもいいかもね。」

ふと、自分の発言にアキレアは顎に指を当てながら思案する。そして、いいことを思いついたとニヤリと笑う。

「一つ提案なのだけれども、まだ時間あるかしら?」

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