第122話 11月5日 土曜日9

「――先輩。わざと負けてくれました?」


 ストラックアウト大敗の俺ちょっとまさかの結果に落ち込んでいると、胡乃葉がそんなことを聞いてきたが――全くである。普通に勝つつもりでもあったんだ……いや、的はそこそこ大きかったからな。って、その大きかったからが仇となった気がするが――。


「そんなことすると思うか?」

「ってことは――先輩は笑いを取りに?ってあれは笑いというか――なんですかね?ある意味――あっ。褒めてほしかった?」

「違う。結構真面目にやった。やった結果が――あれ」


 そう。俺真面目にやって――初めに5番。ど真ん中をぶち抜いたわけ。そしたら――残り11球全部ど真ん中だったわけ。ある意味すごくない?係りの人もちょっと驚いていたけどさ。俺的には――なんか悲しかったよ。全然狙ったところにいかないし。狙って投げても――なぜか全部真ん中ばかりだし。あれもしかして野球なら全球失投というか。ホームランボール?とか言うのか知らないが。ポンポン打たれた気がするよ。


「先輩、もしかして――野球向いているとかじゃないですか?」

「いや――あれって――ど真ん中しか投げれなかっただけ。本当はめっちゃ狙っていたのに……なんで真ん中しか――」

「いや、むしろ狙ったように真ん中。同じ繰り返しに見えましたよ?」

「だよな――俺にも見えた。っか、的が大きいから余裕と思ったのに――」


 そう、ほんと。リプレイを見ているように、俺は同じ所しか投げれなかったんだよな。なんで?って、もう良いか。負けは負けだ――あれ?負けたら――何かあったような――ないな。ないな。忘れておこう。


「じゃあ先輩、罰ゲームです」


 覚えていたか。って、覚えているよな。でもここは――


「聞いてないなー」

「いやいや。先輩」

「はぁ……悪い。で、なんだ?」

「――えっと――何にしましょうか?」


 顎に指をあてて考える胡乃葉。あれ――嫌な予感がするな。胡乃葉の表情的に――なんかとてつもないこと言われそうな気が一瞬だがした。


「さらっと言おうよ。はい。悩まずに」

「いやいや、せっかくの権限ですから。しっかり悩んで――先輩を困らせます」

「怖っ」


 ガチで大変なこと命令されそうだ。


「って――あの――」

「うん?」


すると、胡乃葉がちょっと恥ずかしそうに小声で声をかけてきた。


「先に――ちょっとお手洗い行ってきていいですか?」

「それが内容と。よかった」


 なんだ。トイレ行きたかったのか。って、違うだろうなー。と思った瞬間くらいに。


「違います!」


 言われたわ。


「わかってる。じゃあ――このあたり。飲食スペースに居るから。もしわからなかったら連絡で」

「はいです。ちょっと行ってきます」


 そして、胡乃葉がトイレと書かれている方へと歩き出したのを見てから――俺はあたりを見る。そこそこベンチなどは埋まっているので――このままこのあたりに居る方が胡乃葉も見つけやすいか――などと思っていると。


「おっ、楠君発見」

「えっ?」


 聞き覚えのある声が聞こえてきたのだった。この声は――。

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