第119話 11月5日 土曜日6

 急に2人になった俺と胡乃葉。ちょっと呆然と立ちすくむ――。

 何度か顔を見合わせて――って、すでに東山さんはじめ先ほどまでにぎやかだった方々は消えた。いや、消えたというか――人の波にのまれていった?


「せ、先輩――とりあえず行きますか?ここ立っていても邪魔でしょうし」

「だな」


 俺と胡乃葉はそこそこ人の居るところに放置――という状態だったので、とりあえず歩き出すことにした。


「って、これはなんだ?」

「さ、さあ?」

「――なんか仕組まれた?」

「……の。ノーコメント」


 いや、わからなくはないというか。盛大に勘違いというか。絶対東山さんはじめ何かいろいろ勘違いしたままこの状況になった気がするのだが――どうするのこれ?


 ちなみに横を歩きつつちょっと恥ずかしそうにうつむく胡乃葉だったとさ。って、これからどうするのか。って――2人になったというのは。いつも通りというか。ここ最近。今までだと週末ならよくあったことと言えばあったことだが……なんか雰囲気が変な感じだ。


 俺は気を紛らわすために周りを見る。って、にしても、人多いな。どこ見ても人。人。人だ。


「胡乃葉?大丈夫か?」


 ちょっと戸惑っていた胡乃葉に声をかけると胡乃葉は頭を振って――どうやら余計な考えを振り落としている様子だ。


「――は、はい。いや、なんか急に静かになったから――変な感じですね」

「ほんと。いろいろ騒いでいたが」

「ですね。姫子ちゃんたち勝手にいろいろ言って――」

「あー、胡乃葉?」

「はい?」

「ちょっと確認というか――東山さんたちと一緒にどこか言った2人って――名前なんだった?」

「――――はい?」


 今がチャンス。というのかはだが。胡乃葉しかいないし。ここで確認しておけば今後会っても大丈夫だろうなどと思いつつ。俺は胡乃葉に聞いてみた……のだが。


「いや、名前――聞き取れなかったというか。いや、胡乃葉たち以外に誰かいるとは思わなくてさ、ちょっとパニックだったというか。確認しておいた方が――と」

「――」


 なんか胡乃葉の俺を見る目が冷たくなった。


「なぜに――無言?」


 『先輩名前覚えれてなかったんですか?ってか、よくそれで今まで普通に話していましたね』などと笑われながら――簡単に教えてくれると俺は思っていた。でも――なんか胡乃葉のご機嫌が――悪くなってないか?少し頬が膨らんできた気がする。


「――先輩は知らなくていいんです」

「何故そうなる!?」


 少し間があってから胡乃葉にそんなことを言われた俺。いやいやほんとなんで?って――怒ってないか?胡乃葉のやつ。


「あの――胡乃葉?なんで怒ってる?」

「全く怒ってないです!」


 怒ってるって。


「いやいや」

「別に先輩が他の女の子――まあみんなかわいいですからね。気になるのは自由ですからね。ご自分で聞いてきてください!」

「――めっちゃ怒っとる……」


 誰か俺を助けてくれ。2人きりになって速攻怒らせたんですけど――どうなるのこれ?って、なんで怒ったの?俺名前を教えてほしかっただけなんだが……。

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