第54話 10月21日 金曜日5
「——じゃ、先輩からどうぞです」
「俺から?」
するともう自己紹介開始らしく。ココがそんなことを言ってきた。って、ここはココが先に名乗るのかと思ったが。俺からだったらしい。まさかだが。俺の名前だけ聞き出して――ということはないな。ココという子はそんな子ではない。ちょっと先ほどから先輩いじりを楽しんでいる素振りはあったが――。
「はい。先輩」
俺がちょっと考え事をしていると。ココが催促してきたため。俺は自己紹介を始めた。
「はいよ。えっと――俺は
「楠久瑠斗先輩――あっ、だから、頭文字取ってククだったんですね。なるほど」
すぐばれたー。って、まあわかるか。シンプルだからな。ココの言う通り俺は頭文字を取っただけの仮の名前だったからな。
「――まあその通りだな。何も捻っているとかはない。ホントただ頭の文字を使っただけだ」
「えへへ、ちなみに私も同じですがね」
「えっ?」
するとココがちょっとだけピシッと背筋を伸ばして――。
「私は――
何が同じなのか?と俺が聞く前に、ココが名乗り。
すぐに俺も『なるほど……』と、なったのだった。さすがに俺でもすぐにピンときたというか。普通にわかるな。どうやら2人とも同じ考えだったらしい。というか捻るなどなく。ただそのまま使ったという感じだったようだ。
彼女の名前は、米野胡乃葉。こちらも頭文字を取ったらココだ。
「ホントだな」
「はい、同じ理由でしたね」
「まあパッと浮かぶのがなー。俺はこれくらいだったし。変なあだ名は今までにもたくさんあったが……」
例えば、最近で言えばクルトンだな。
これは旺駆里がずっと初めから言ってくるが。俺気に入ってないからな?あとは――昔だと、クルクルとか――まあクルクルはまだマシなのか?いや、マシじゃない気がする。クルクル。なんか回っている。狂っている見たいじゃん。って、過去の事なんて思い出さなくてもいいか。そんな楽しいことはないからな。
「変なあだ名だと――私は昔……幽霊とか言われましたね」
おっと、俺が昔の事を思い出していると――彼女も昔を思い出していたらしい。ちょっと言いにくそうだったが。そんなこと言った……って、なんて言った?幽霊?何で?
「えっ?幽霊?」
「——はい。小学校から……中学にかけてですがね。見た目が――だったらしいです。というか。1人が言い出したらなんか広まってて……特に極端に髪が長いとかは無くて――まあ、オロオロ。もじもじはよくしちゃっていたと思うので――そう言うのをひっくるめてそう見えたのかもですが……」
「いやいや、どこに幽霊の要素があるのか。いや、かわいいからいじっていたとかじゃないか?」
ありそうだな。気になるからいじめてやる。見たいな感じか。絶対ココって――って、彼女。米野さんか。ダメだ。ココが癖になっているからな。ごちゃごちゃになりそうだが――とにかく。米野さんは小さくなってもかわいいだろうし。多分今のまま小さくなったら――間違いなくかわいいな。さらに小動物みたいに見えそうだし。などと俺が思っていると。
「——先輩。さらっと――照れること言わないでくださいよ」
何故かちょっと頬を赤くしているコ……米野さんが隣に居た。
「うん?俺――なんか変な事言った?」
「な、なんでもないですー」
あれ?ちょっと米野さんが――照れた?って、俺なんかそんな変な事言ったっけか?うーん。
「と、とにかく。私先輩と同じく。名前の頭文字がすぐに浮かんだので。です」
「な、なるほど、って――なんか自己紹介もほんと今更だな」
俺が少し自分の発言を思い出そうとしていると、米野さんが無理やり話を戻した。
ってか、それが正解か。変に話を戻してなんか言われるのもだからな。ということで、俺達はなんやかんやと言いつつ数か月間こうしてドーナツ屋でほぼ毎週会って話していたが。やっとのことで名前を知ったのだった。
にしても、ずっと名前とかの情報は知らなかったままできたというか。知っているのは――2人ともが大学生で先輩後輩にあたるということくらいだったからな。よくそれで数か月やってきたな。
うんうん。と俺が自問自答しつつ今までの事をちょっと思い出していた。
「ですね。って、先輩」
「うん?」
「先輩とお友達になりたいです」
俺が過去の事を思い出していると、米野さんがそんなことを言ってきたのだった。
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