第63話:父性愛

 おどろいた、こんなに激怒された父上を生れて始めて見た。

 瞳に炎が宿っているのかと思うくらい熱く激しい視線を向けている。

 父上からそんな視線を向けられたセバスチャンは、どこかうれしそうだ。

 父上がセバスチャンの予測の上を行ったのだろうか。

 だとしたら、父上は以前セバスチャンが言っていた、一皮むけた状態になったという事だろうか。


「申し訳ございません、大公殿下」


「私を大公閣下と呼び、スカイラーを奥方様と呼ぶ以上、今回の件は親として不服があったとしても、立場を考えて飲み込んで欲しいと言う事であろう。

 普通な事であったら、私も良薬を飲む気持ちで飲み込んだろう。

 だが、これだけはダメだ、絶対に飲み込めん。

 スカイラーに我慢させるわけにもいかない、絶対にだ」


「理由をお聞かせ願えますか」


「よかろう、聞かせてやろう、イーライもよく聞いておけ」


「「はい、大公閣下」」


 俺にまで言い聞かせなければいけない理由とは何だろう。


「お腹の中の子供に魔力を与えるのは親の役目、いや、権利である。

 どれほど利点があろうとも、他人が係わっていい事ではない。

 そんな事を許したら、そんな前例を作ってしまったら、赤の他人の魔力が我が子に入ってしまう事になるのだ。

 このような事は、倫理的に絶対に許されない、いや、許してはいけない。

 今回の事がこの世界で初めて行われる事だとしたら、今後行われる事の前例となり、後に続く者がマネをする事になるのだぞ。

 私はここに強く反対し、今後に続く者に警告しておく。

 親以外の者が、お腹の子供に魔力を注げば、出生と育ちに疑念を生んでしまい、家督争いの元にになるから、絶対にするな」


 父上の話しを聞いているうちに、セバスチャンの顔色がどんどん悪くなった。


「申し訳ございません、大公殿下。

 全てはわたくしの常識不足が原因でございます。

 孤児であったわたくしは、常識外れの魔女に育てていただきました。

 魔力のなかったわたくしは、膨大な知識を授けていただきました。

 ですが、常識とか情愛を学べませんでした。

 いえ、情愛に関しては、わたくし自身が学ぼうとしませんでした。

 それが間違いだったと、今思い知りました」


 原因はそれだけではない、セバスチャンが俺と同じ転生者だからだ。

 前世の記憶や知識、常識や倫理観を持っている。

 今回の計算間違いは、その影響が大きいのだろうな。

 以前セバスチャンが教えてくれた、マッドサイエンティストという存在に、セバスチャン自身が当てはまっているのかもしれない。

 それとも、この状況までセバスチャンの計算だったのだろうか。

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