第62話:父上の叱責

「もっといい方法とは、どういう方法なのです」


 母上がもの凄く真剣に、前のめりになって聞かれた。

 それにしても、俺を産むときに母上が死にかけたというのは初耳だぞ。

 セバスチャンはもちろん、大公家に仕える他の誰にも聞いた事がなかった。

 こんな重大な話、普通なら必ず誰かが噂している。

 よほど厳しい緘口令が敷かれていたのだろう。

 俺の心に負担をかけないためだったとしたら、うれし過ぎて……


「もう止めよ、イーライが泣いているではないか。

 どうしようもない、それも、もう過ぎた事で、イーライに負担をかけるではない」


 思わず泣いてしまっていた俺の為、に父上が厳しくセバスチャンを叱責された。

 生れてはじめて、父上がセバスチャンを叱責する所を見た。


「申し訳ございません」


 セバスチャンが心から詫びているのが伝わってくる。

 だがこうなる事は分かっていたはずだから、次に何か言ってくるぞ。

 セバスチャンが、父上をここまで怒らせると分かっていてやった事だ。

 不退転の覚悟で始めた事だろうからな。

 これから起こる事を考えていると、涙が止まってしまったよ。

 心おきなく、もっと長く、感動も涙を流させてくれよ。


「イーライ様の心を傷つけた事、心からお詫びさせていただきます。

 ですが、これから話す事は、大公家の将来に係わるとても重大な事なのです。

 家臣領民の為にも、イーライ公子殿下、オードリー公女殿下、サバンナ公女殿下、これからお生まれになる殿下方の為にも、やらなければならない事なのです」


「分かった、大公として話しを聞く、続けよ」


「はい、ありがとうございます、大公殿下。

 イーライ様が従魔従竜の妊娠出産の手助けをしているうちに、外から魔力を注ぐことで、お腹の中の子供がとても強い魔力を持つ事が分かったのです。

 それがイーライ様だけにできる事なのか、他の方にもできる事なのかは、まだ断言できるほど数を重ねておりません。

 ですが、少なくとも、イーライ様が魔力を外から注ぐことは可能でした。

 他にも魔力持ちの主人が従魔に魔力を注ぐことで、従魔のお腹の中にいた子供の魔力が、普通よりも高まる事例がございました。

 ただ、主人の魔力が低い事例では、明らかな差異が分からない事が多いです」


「セバスチャン、それは、スカイラーが妊娠した時に、イーライにお腹の中に魔力を注ぐ実験をさせたい言う事か」


「母親が魔力持ちで妊娠するケースは、ほとんど王侯貴族に限られます。

 臣従した貴族士族のこのような実験を強要する事などできません。

 できましたら、奥方様に安全に妊娠出産していただきくためにも、イーライ様に魔力を注いでいただきたいのでございます」


「バカモノ!」

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