第59話:婚姻政策

 やはりセバスチャンは悪巧みをしていたようだ。

 いや、悪巧みと決めつける訳にはいかないが、何か考えがあるようだ。

 そうでなければ、自分からは厳しい指摘をしたくない父上の頭を、母上を使って抑えたりはしない、絶対最初から考えていた事だ。

 これまで起こった事の全てが、セバスチャンの思惑通りなのだ。

 俺も母上も父上も、最初からセバスチャンに踊らされていたのだ。


「セバスチャン、それはどういう事かしら。

 ヴァイオレット王女との婚約話は断るけれど、他の方との婚約話をするのかしら」


 母上が厳しい調子でセバスチャンに詰め寄る。

 その母上とセバスチャンの対峙を、父上がハラハラした表情で見ている。

 以前俺が見ていた父上の立派な態度はどこに行ってしまったのだ。

 俺を一人前扱いして本性を見せてくれているのだろうが、止めてくれ。

 もっと長く父親の威厳を見せて欲しい。


「いえ、そのような事はまったく考えておりません。

 イーライ様は大公家の大切な跡継ぎでございます。

 どのような大国が相手でありましても、性格の悪い王女などと結婚していただくよりは、忠誠心の高い国内貴族の令嬢と結婚していただくべきです。

 適当な国内貴族令嬢がいないのでしたら、平民の娘をわたくしの養女にして、イーライ様と結婚していただきます」


 セバスチャンの話しを聞いている母上の表情が百面相のように変わる。

 最初に俺の政略結婚を否定された時には、満面の笑みを浮かべていた。

 だがそこから国内貴族令嬢との結婚話になって、表情が硬くなった。

 最後に平民娘をセバスチャンの養女にする話になって、怒りの表情に変わった。

 なぜ母上の表情がそんな風に変わるかが分からない。

 大公家の自由に扱える嫁が俺の正室になるのは、いいことのはずなのだが。


「セバスチャン、私の可愛いイーライの正室を、平民から迎えると言うのですか」


「そう決まったわけではありません、奥方様。

 イーライ様の正室は身分に囚われる事なく選びたいと思っているのでございます。

 常に一番側にいるご正室には、イーライ様を愛し護る気概と実力のある方でなければならないのでございます、奥方様。

 普通の王族ならば、国内外の力関係で夫や妻を選ばなければいけません。

 ですがイーライ様の実力でしたら、好きな方を妻に迎えることができます。

 オークリー様とスカイラー様のようにです」


 セバスチャンが父上と母上を例に出した事で、母上の表情が一変した。

 鬼のような怒りの表情を浮かべていた母上が、照れて真っ赤になられている。

 噂で聞いていたように、父上と母上は大恋愛の末に結ばれたようだ。

 そこを突かれて何も言い返せなくなってしまわれた。

 これも最初からセバスチャンが決めていた作戦なのだろうな。

 やっぱり家族全員セバスチャンの手のひらの上で踊らされているな。


「そこでと言っては何なのですが、オークリー様とスカイラー様にはイーライ様の為にやっていただきたい事があるのです」

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