第33話:修学旅行

「セバスチャン、本当にこんな事をしていて大丈夫なのか。

 王家と貴族士族の取り合いをしているのではないのか。

 どれだけ多くの貴族士族を味方に取り込めるかで、戦争が始まるかどうかが決まると、家臣たちが噂しているのを聞いたぞ」


「確かにその通りではございますが、何の心配もありません。

 あの馬鹿将軍は、今まで非道を重ねてきたので、全く人望がありません。

 あの馬鹿将軍を上手く操っていた国王も、今は表に出られません。

 その機会を生かして、家臣たちを派遣して大公家に取り込んでおります。

 イーライ様が心配なさるような状態ではありません」


「いや、セバスチャンが指揮を執ってくれているから、心配はしていない。

 ただ、大公家の公子として、遊んでいるのが申し訳ないのだ。

 私も父上に協力して大公家のために働くべきではないのか」


「また勘違いをなされておられますぞ、イーライ様。

 イーライ様は、もう十分以上に大公閣下に協力されておられます。

 わたくしなど足元にも及ばない、絶大な協力をなされておられます」


「俺がまた勘違いをしていたというのだな。

 だったたらはっきりと教えてくれ、セバスチャン。

 俺はどんな事で父上に協力したのだ、まったく覚えがないのだが」


「一つは何を置いても大魔境での狩りでございます。

 高く売れる素材は、各種ギルドに売り払って軍資金としております。

 安価な肉は、保存食にして貴族士族に兵糧として支援に送っております。

 魔晶石や魔石は、魔法陣に組み込んで攻守に使う魔道具にしております。

 魅了した従魔を家臣に貸し与えて、大公家の軍事力を大増強しております。

 従魔士となった家臣たちを、貴族士族家の援軍に派遣しております。

 他にも数多くの協力をなされていますが、全部は言い切れません。

 それでもまだ何も協力していないと申されますか」


「あああああ、全部今まで通りにしているだけなのだが、協力なのだな。

 今まで通り自分の好きな事をするのが、父上のお力になれるのだな」


「はい、その通りでございます」


「だったら修学旅行など行わずに、いつも通り狩りをした方いいのではないか。

 いっそ狩りの回数を増やした方がいいのではないか。

 その方が俺も楽しいし、修学旅行を中止するのは……孤児たちが哀しむか」


「はい、イーライ様は、あれほど修学旅行を愉しみにしている孤児たちに、俺は狩りの方がいいから修学旅行を中止させる、と言えますか」


「そんな事はとても言えないな、そんな事をしては忠誠心を失ってしまう」


「お分かりならば、楽しそうな顔をしてください、イーライ様。

 それに、修学旅行の内容は、以前にお約束したように、大公家のためになり、領民も喜び、イーライ様が愉しめるものになっております。

 それに、こうして孤児たちと一緒に歩いてお弁当を食べるのも、お嫌いではないのでしょう」


「正直に言おう、嫌いではないどころか、とても楽しい。

 分かったよ、ひねくれた事はもう言わない。 

 ちゃんと楽しんでいる事を表情に出すよ」


「そうしてくださると孤児たちもうれしく思う事でしょう。

 ではイーライ様、私とではなく、孤児たちと並んで歩いてくださいませ」

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