第32話:閑話・ハミルトン王国対策・セバスチャン視点
「セバスチャン、王国の動きはどうなっている」
大公殿下は睡眠不足になっておられるようだ。
繰り返し大丈夫ですと申し上げているのだが、心からは信じていただけない。
領民想いの心優しい大公殿下なのだが、少し気弱な面があられる。
私のお育ての仕方が悪かったと胸が痛むが、詫びるだけでは無責任だ。
心から安心して頂けるように、補佐させてしていただくしかない。
そのためには、説明の仕方も工夫する必要があるな。
「この前の馬鹿将軍が色々と動いているようですが、今までの行いが悪すぎましたから、ほとんどすべての貴族と士族に離反されております。
大公領から遠く王都に近い貴族士族は、表向きは馬鹿将軍に従うように見せかけておりますが、内心では大公殿下に心寄せております。
大公領に近く王都から離れた貴族士族は、王家を離れて大公家に忠誠を誓いたいと願い出ております」
「だがその貴族士族は、王都に近い貴族士族と同じように、大公家を恐れて忠誠を誓うと言っているだけで、本心では王家を慕っているのではないか。
いや、すまぬ、分かっているのだ、彼らが誰にも忠誠心を持っていない事は。
彼らは自家を護りたいだけで、強い方につくだけなのは分かっている。
性根の悪い者は自分の富や権力を維持するために、領主としての矜持と慈愛の心を持つ者は領民を護るために、勝つ方につきたいのだと分かっている」
私がお育てしたからだと誇る気はないが、とてもお優しく、しかも頭もよいご領主になられたが、問題は気の弱さと決断の遅さだ。
私が大公国の政治を壟断していると思われるのは構わないが、大公殿下が愚かだとか気弱だとかなんて、他国や領民に思われるわけにはいかない。
貴族や家臣に政策を命じる時だけは、今まで通り自信満々に振舞っていただく。
今まで公爵としてやれていた事だ、大公になられても大丈夫だろう。
「分かっておられるのなら大丈夫でございます。
王家も貴族家も、生き残るのが大変なのは同じでございます。
力がなくても油断していても、他家に滅ぼされてしまいます。
愚かな政治や無慈悲な政治を行えば、家臣や民に叛乱を起こされて滅ぼされます。
その事を忘れずに、内政と外交を行われたらいいのです」
「それは分かっているが、遠方の貴族や士族まで取り込んでいいのか。
私が彼らの臣従を認めた事で、彼らが王家に攻められて滅ぶ姿は見たくない。
だが同時に、武器や兵糧を支援し過ぎて、それを持って王家に寝返られるのも嫌だと思ってしまうのだ」
「大丈夫でございます、大公殿下。
貴族士族の見極めはわたくしが責任を持って行わせていただきます。
全ての責任はわたくしにあって、殿下の責任ではありません」
「それも嫌なのだ、セバスチャン。
セバスチャンに全ての責任を押し付けるような事はしたくない。
領主は私で、大公と言う重責を担う決断をしたのも私だ。
全ての責任は大公である私が背負うべきものだ」
「大公閣下、そのような間違ったお考えは改めてください。
確かに大公閣下の背負われる責任は、とても重い物でございます。
ですが、その全てをお一人で背負う必要はありません。
王家でも多くの家臣が王を支え、手足となって働いております。
一番小さな貴族、男爵家でも執事や家臣が当主を支えております。
大公家には憚りながらわたくしもおれば、有能で忠誠心に溢れた家臣が数多くおりますので、使いこなしてくださるようお願い申し上げます」
「ありがとう、セバスチャン、では今回の件も頼んでいいか。
私に臣従を誓う貴族士族を見捨てたくはないが、同時に裏切られるも嫌なのだ。
その辺の見極めを、セバスチャンと家臣に頼みたいのだが、いいか」
「お任せください、大公殿下。
既に全ての貴族士族の見極めは済んでおります。
武器や兵糧を送るべき相手も、王家に抱え込ませる相手も」
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