第30話:お仕事

「イーライ様、何かやりたいことはありますか」


「領民のためになる事をやりたい」


「そのような堅苦し事は申されずに、自由に好きな事を申されていいのですよ」


「自由に好きな事をと言われても、特にやりたい事などない。

 あえて言うなら大和たちと狩りをする事だが、それは毎日やれている。

 ああ、そうだ、他に好きな事と言われれば、大和たちにブラッシングしてやる事も好きだが、それもやっているし、大和たちと一緒のベッドで眠る事も毎日の日課だ。

 う~ん、今更他の事と言われても、何も思い浮かばないぞ、セバスチャン」


「やれ、やれ、困りましたね。

 イーライ様は働き過ぎですし、少しは休んでいただきたいのですが、イーライ様が休まれる訳がありませんから、好きな事をしていただこうと思ったのですが」


「働き過ぎと言われても、何もしていないぞ。

 セバスチャンに教わった魔力を増幅させる鍛錬は、日課であって仕事ではない。

 耕作地に魔力を注いで穀物を育てる事も、日課であって仕事ではない。

 孤児たちに勉強を教える事も、楽しみであって仕事ではない。

 大和たちに魔力や食事を与えて触れ合う事も、楽しみであって仕事ではない。

 それは狩りも同じで、いや、最高の楽しみだぞ。

 仕事など何もしていないと思うが、俺はどんな仕事をやっているのだ」


「イーライ様、その全てが仕事なのですよ。

 魔力を鍛錬する事は、魔術を扱う者には苦しい仕事と言うか、苦行です。

 耕作地に魔力を注ぐことは、領主や農民に雇われた魔術士の仕事です。

 穀物を育てる事は、魔術士と農民の仕事です。

 孤児たちに勉強を教える事は、教師の仕事です。

 従魔に魔力や食事を与えて調教する事は、従魔士のとても大切な仕事です。

 だから当然狩りも冒険者や狩人の大切な仕事になります。

 考えを改めていただきませんと、イーライ様は家臣に褒美や休息を与える心算で、大変な仕事を押し付けてしまう事になりますぞ」


「なに、それはいけないな、急いで考えを改める事にする。

 今直ぐ俺が勘違いしている事を全部教えてくれ、セバスチャン」


「分かりました、ですがそれはゆっくりとお伝えさせて頂きます。

 今はまずイーライ様に休息を愉しんでいただく事でございます。

 本当になにもやりたい事がないのですか」


「今の話しを聞いてしまったら、何が休息なのか全く分からなくなった。

 もしセバスチャンがどうしてもと言ったら、狩りをさせてくれと言う心算だった。

 だから俺にやりたい事を聞くのは止めてくれ。

 それよりはセバスチャンが選んでくれないか。

 領民のためになって、俺が愉しめそうなことを考えてくれ。

 セバスチャンなら遊びと仕事の融合を考えられるのではないか」


「やれ、やれ、困った事を言ってくださいますね。

 ですが、イーライ様のためになるのなら、やりがいもございますね。

 遠足や修学旅行を、この世界でやっていただくと言うのもいいですね。

 級友の代わりは孤児たちにやってもらうとして、何を学んでいただくかですね。

 まずは遠足を考えて、日帰りができる農村で、イーライ様に体験していただきたい事で、愉しんでもらえて農民の為にもなる事と言えば……」 

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