第22話:青木魔狼と黄土魔狼

 その日は五度の狩りを行ったが、全部大成功だった。

 狩りをするたびに、孤児たちと狼の絆が強くなるのが分かる。

 特にベラたち魔狼をパートナーとする者の絆が強くなっている。

 俺と狼たちの間には、俺がかけた魅了魔術があるから、他の者との絆ができてくると、その変化が手に取るように分かるのだ。


「今日はこれで孤児院に帰りなさい。

 帰ったらちゃんと狼たちにブラッシングをしてあげるのです。

 足の間に石や小枝が挟まっていないか、ケガをしていないかを確認しなさい」


「「「「「はい」」」」」


 孤児たちは元気な返事をして笑顔で孤児院に帰って行った。

 ベラは少し残念そうな表情をしていたが、声をかけて抱きついては来なかった。

 わずか十日でよく成長してくれたものだ。

 死ぬまでずっと俺の側で仕えるためには、行儀作法が大切だと分かったのだろう。

 俺の側にいる、護衛騎士以上に信頼される親衛隊に成れるとセバスチャンが約束した事も、大きな影響があるのかもしれない。

 

「ではこれから魔境の奥に行く。

 気をゆるめる事なく、何時でも何に対しても対応できるようにしておく事」


「「「「「はっ」」」」」


 護衛騎士たちが一斉に短く元気よく返事をした。

 こいつらも危機感を持って日々の任務に就いている。

 叛逆者たちを処分した時に、叛逆者の押しで俺の護衛騎士になっていた者は、セバスチャンの調査に従って一緒に処分されたり解任されたりした。

 それを見ていた護衛騎士たちは、常にセバスチャンの目を意識している。

 それは新たに抜擢された新人護衛騎士たちも同じだった。


 そんな護衛騎士たちが、自分たちより強い魔狼をパートナーにしている孤児たちの活躍を見ていたのだから、危機感を持って当然なのだ。

 少しでもいい所を見せて、役に立つところをアピールしたいのだ。

 だが、護衛騎士たちのその気持ちは罠でもある。

 セバスチャンにとって大切なのは、俺を護る気持ちがあるかどうかだ。

 自分の力を見せようとするあまり、俺を危地に立たせるような者は敵でしかない。


「ついて来れない者は無理をするな。

 この場で安全な陣地を確保しておけ、行くぞ」


 それはそう言い捨てると大魔境の奥に向かって駆けた。

 大和ほどではないが、常時発動している探知魔術に強力な魔力を感じるのだ。

 属性を確認する新たな探知魔術を発動したら、木属性と土属性を感じた。

 だが二つ目の探知魔術で敵の存在を感じたのか、二つの反応が奥に逃げ出した。

 せっかく見つけた強力な魔物を逃がすわけにはいかない。

 魅了するか狩るかは直接見て見なければ決められないので、まずは確認する。


「魔物が逃げる、俺はスピードをあげるから、お前たちは戻っていろ」


 俺の護衛騎士を務めるくらいだから、当然士族級の魔力は持っている。

 だが、今逃げている魔物に追いつけるくらい早く駆けられる護衛騎士はいない。

 唯一ついて来られるのは大和だけだ。

 以前ならセバスチャンがいない時には、護衛騎士たちを側に置かなければいけなかったが、大和が側にいてくれるようになって変わったのだ。

 大和は護衛騎士たち以上に信用されているのだ。


「殺すな大和、こいつらは俺の護衛にするからな。

 お前がリーダーで、こいつらは配下だからな」


 大和なら分かってくれると信じている。

 大魔境に入って初めて見つけた強力な魔狼、青木魔狼と黄土魔狼だ。

 この二頭がいれば、俺が魔術を使わなくても穀物の生産が可能だ。

 魔物から手に入れた魔核を黄土魔狼に食べさせて、得られた魔力で大地を豊かにさてから種をまいて、青木魔狼で穀物を一気に育てて豊かな実りを手に入れるのだ。


(魅了魔術)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る