第23話:王国の使者

 青木魔狼と黄土魔狼を魅了して従魔にした。

 ベラの炎魔狼も普通人間が遭遇する魔獣の中ではとても強力な個体だ。

 だがその炎魔狼よりも二段階も強力な魔狼など滅多に遭遇出来ない。

 しかもその魔狼を従魔にした人間など皆無だと、公爵家中の人間から驚かれ、褒め称えられたが、少々照れ臭かった。


 まあ、他にも多くの狼と魔狼、犬と狗を従魔にして、孤児たちとの相性判定をした後で、残った魔獣を公爵家の家臣たちにも相性判定させてみた。

 俺が魅了して従魔にした魔獣たちなので、わずかでも俺に敵意を持っている者は本性で分かるらしく、王家や他家から送られた密偵を見つけてくれた。

 あらかじめセバスチャンに言われていたから、その場で処罰する事なく、泳がしておいて、ここぞという時に断罪する事にした。


「この度の不始末、国王陛下を謀って愚か者が勝手にやった事です。

 ですから、国王陛下が責任を取る必要のない事でございます。

 この事はここではっきりと申し上げさせて頂きます。

 ただ王国の者が公爵家に迷惑をかけた事は間違いありません。

 王家の政治を預かる者として、この通り、お詫びさせていただきます」


 王国の内務大臣と言う奴が公爵家にやって来て形だけ謝っているが、腹が立つ。

 最初に上から目線で国王に責任がないと断言しやがった。

 こちらでは王がやった事だと思っていたのだが、今確信した。

 このような使者を送ってくるようなら、まず間違いなく王がやらせた事だろう。

 だが別にもうどうでもいい事だ、我が家は独立を宣言するのだから。


「宮中伯の言い分は分かりました、だからもう帰ってくださってかまいません。

 こちらとしては、もう二度と宮中伯らと会わずに済めばそれでいいいのです」


 セバスチャンがはっきりと言い切ってくれた。


「黙れ、私は執事ごときと話しているわけではない。

 公爵殿と話しているのだ、平民の執事ごときが口出しするな、殺すぞ」


「はて、宮中伯は内務大臣と国王陛下の代わりに詫びに来たのではないのですね。

 だったら城にあげる事なく首を刎ねた方がよかったですね」


「黙れと言っているのが分からんか、今直ぐこの剣で首を刎ねてくれるぞ」


 この程度の馬鹿がよく王国の内務大臣を務めていられるモノだ。

 それとも、こちらの言いたい事に気がつかない振りをして、話しをまとめる気か。

 それも馬鹿としか言いようがないのだが、そうではないようだな。

 はっきり言って聞かせないと、こちらの覚悟は伝わらないようだ。


「ほう、それは王国が公国に宣戦布告をするという事ですか」


「何を言っている、公国とは何のことを言っているのだ」


「やれ、やれ、何度も態度で示していた事も理解できず、言葉にしても理解できないとは、愚かにもほどがありますね」


「おのれ、言わせておれば好き勝手言いおって、死ね」


 馬鹿な使者がセバスチャンを斬り殺そうと剣に手をかけた。

 手をかけただけならこちらも攻撃しなかったのだが、剣を抜きかけた。

 目の前にいるのはセバスチャンでも、その後ろにある壇上には俺たちがいる。

 公爵一家、いや、大公一家がいる方に向けて剣を抜こうとしたのだ。

 この行為は宣戦布告と、いや、詫びと言いながら大公一家を殺そうとしたと言われてもしかたがない行為だ。


 ギャアアアアア


 内務大臣と名乗った愚か者が、右腕を食い千切られて絶叫をあげている。

 俺の護衛を務めている魔狼の一頭が、素早く動いて咬み千切ってくれたのだ。

 大和などの強力な魔狼は、俺と家族を護るために玉座の横にいてくれる。

 壇上の下、俺たちから離れれば離れるほど順位が下の魔狼がいる。


 王国内務大臣の近くにいたのは、金魔狼だった。

 金魔狼なら例え相手が完全武装の騎士であろうと、腕を咬み千切ってくれる。

 まして相手が豚同然の王国の内務大臣で、防具もない腕なら豆腐同然だろう。

 だが、王国にも少しはましな人間もいるようだ。

 副使と名乗った武人が素早く前に出てきやがった。


「何をなさいますか、このような非道を行ってタダですむと思われているのか」


 いよいよ開戦の口実に動いてきたようだが、こちらにも準備があるのだよ

 どうやら王国の本当に使者は、副使だと名乗ったこの男のようだな。

 セバスチャンが楽しそうな表情をしているが、もしかしたら、俺も同じような表情をしているのかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る