第23話

「スピード1只今帰投しました」

「港への入港を確認、必要補給品の報告を願います」

「了解した」

「ジュリガーさん、整備長室に来てください」

「了解しました」と言いつつも場所を知らず促されるように一つの部屋に連れて行かれた。

「おつかれえ、ジュリガーくん。

 船2隻も沈めたんだって否、あれは君は指揮官扱いじゃないんだっけ。

 まあいいや、戦場は面白いだろ」

 皮肉など一切含むことなく、心の底からの喜びでこの男は笑っている。

「まあ、君を呼んだ理由は立場的な問題でねえ。

 君の機体などの損傷報告をきいて、整備状況とか必要な資材の確認しなきゃいけないんだなあ」

「じゃあ、損害の方は一様こんな感じです」

 俺は手元にあった端末を見せた。

「明確な損害としては観測機を破壊されたのと、ロングバレルライフルを破壊された。

 ってところだ」

「機体の要換装用のパーツはあったりしないのか」

「船とモービルの機体の損傷度は今調べてるから待っていてほしいんだが」

「まあそれくらいは構わないよお」

「あっそれと,これ見てもらえないか」

 俺はそう言いながら端末を見せなおした。

「なんなんだいこれ、奇妙な機体だねえ」

「今回船を2隻沈めた張本人だ」

「こんな奇妙な見た目の機体に負けたのかい。

 笑い草も生えないよ」

 薄っぺらい表情を浮かべながらMADな男は笑っている。

「で君はこんな奇妙な機体を見せて何が言いたいんだい」

「こいつはやばいと思わないか」

「たしかに、観測データを見る限りこいつのリアクターはNO DATA.

 言い方を変えれば新型ってことだろ。

 立場的に言っちゃいけないんんだろうが、うちの設備で新型なんか出されてしまえば太刀打ちできなくなるだろうな」

「それがどうしたんだ、亡命の準備を手伝ってくれなんて言うきかい」

「それでもありかな、まあ面白い話だからぜひとも知っておいてくれ」

 俺は身を翻して戻っていった。

「オファ、機体の破損度はどうだった」

「基本的ナ損傷度ハナカッタ、デスガ弾幕ノ一部ガ関節部ナドニ侵入シテイタヨウデ」「修理の方はどれくらいで終わりそうか」「乾燥作業ダケナノデアレバ二時間ホドデ終ワリマス」

「了解した、必要なパーツは整備帳に申請すれば出るはずだから頼んだぞ」

「了解」

 突然基地内のアナウンスが鳴り出した。「接敵予測時間まで残り十時間を切りました。館長並びに各ブロック長は作戦本部A1に集合してください」との、まさかのラブコールだった。

 まあ別になかったら、それはそれで不安になっていただろうが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る