第19話

 船内アナウンスで入港を伝えるものが絶え間なく聞こえていたが、それも入港の際のお大きな揺れと音には敵わなかった。

 意訳しよう、頭ぶつけた超ー痛え。

 まじで一度船も港もどちらもシステム見直ししたほうがいい、絶対壊れてる。

 そうじゃないんなら人の手での作業やめろよまじでさあ。

 自動化のシークエンス組んどけよ、ほんとに。

(自動化してこれなら本気で救いがないか、または作者が相当な馬鹿者か)

 久しぶりに率直な怒りが頭を埋め尽くした。

 感情の起伏で壊れてしまいそうだ、まったくもおお。

 振動も収まり完全に着艦したらしい。

 ドン、かなり強引な音が響きドアが開いた。

 そこには明らかに屈強な男が立っていた。

 男は俺に軽い手錠をかけると俺を部屋から、船から連れ出した。

 移動用と思われる通路を通り俺は一つの部屋に連れてかれた。

(ちなみにここの通路には人工重力がなかったのに対しこの部屋には重力がある)

 てか明らか通路や船内とは一線を隠す豪華さだよなこの部屋。

 ぱっと見からしてもなんというか館長室とかその類の重々しさを感じる。

 俺は下座に座らされたが上座に関してはなんかすげえでかいし羽毛で覆われてるしで怖すぎるんだが。

 それに上座の前にある机の上には三次元宇宙地図の生成器が置いてあった。

 すると上座の横にあるドアが開いた。

 そこから入ってきたにはこれまた屈強そうで顔に幾つかの傷のある男とさっきの船の艦長だった。

「貴君があのDrMADに下を巻かせた天才にしてff粒子の父の孫かい」

 屈強そうな男は上座に座るとすぐにそんなことを言ってきた。(艦長は上座の横に後ろで手を組みながら立っている)

 面白いものを見る目で俺を舐め回すように見てきた。

 初見の印象はどこか気持ち悪いおじさんってところだが、その中に殺意が見え隠れするってところだ。

「まあ、挨拶はこれくらいにして本題に映るとするか」

 俺から見て左の俺と机の間の壁に突然光が灯った。

 かなりデザイン性の高いモニターらしい。

 映し出されてるのはあの魔改造量産機だった。

「これがありあわせの物と光学形成機でできてるとはほんとに驚くことしかできなくなるよ」

 挑発と受け取って良さそうだ。

 はたまた好奇心が強いおじさんなのか。

 何であれこの人が重鎮なのは間違いない、この人に切り込むしかない。

「あなた方は何者なのでしょうか」

 なんの包みなく、目をにらみながら言う。

「君はあまり外界と触れるのに慣れていないんだね。

 まあ、概要だけでも教えてやるか」

 そう言いながら屈強そうな男は館長に目をやった。

「了解、我々はコロニー独立を目的とする組織です」

 そう言いながらさっき俺の機体を映していたモニターはなんとも言えないエンブレムを映し出した。

「組織の名前はI(independence)O(our)C(colony)だ」

 こいつらはコロニーの独立を目的だと。

 じゃ一体どうしてどうして「コロニーを破壊したんだ」

 目の前にいる二人は突然あっけにとられたような顔となった。

「我々は先刻起きたコロニー破壊事件には一切の関与をしていない。

 それどころか裏とはいえ原因究明のためにだいたい規模を派遣しているほどだ。

 なんせ彼らも同じコロニーの同士たちだ」

「彼らの独立を促すのも我々の使命の一つだ」

 彼ら二人はかなり慌てて弁解してきた。

 この慌て具合からして表面上の感情を見せて来ているとは考え難い。

 それにもしあんな高性能な機体(俺の機体のカタログスペックなどと比較して。)を持っていればあんなただですら旧式でなおかつ中身はもっとひどい詐欺機体を買うはずもないか。

 それを外部のどこの馬の骨ともわからないやつに整備を任せるなんてなおさらだ。

 あくまでこれはたった一隻の船の中での話なのだから安直に断言すのは無理だが少なくとも組織内の表層部はそう言うことになっているのだろう。

「ちなみにここはあくまでその支部の一つでしかないからな、変な頓痴気騒ぎを起こさないでくれよ」

 それを言われてすぐに俺はここに連れてきた屈強そうな男がまたやってきたまたこのこの部屋から連れ出された。

 しかし俺は船の中で収容されていた部屋のような場所ではなく整備用ドックのあるかなり開いたブロックに移動することを促されたと言うよりか運ばれていった。

「うちのあたまでっかちな旧式人に許してもらえたんかあ」

 声をかけてきたやつは他でもなく部下には整備長と呼ばれ上司にはDrMAD呼ばれる男その人だった。

 その男が持っていたタブレットに書かれていた文面そのタイトルは”設備整備計画”だった。

「では改めて言おう。

 先刻の続きを行ってくれ」

「ABCビルダーを使えって意味ですか」

「あの箱がそんな名前ならその通りだ」

「無理です」

「はっ、君は自分が何を言っているのかわかっているのか。

 私の好奇心をとメリとはなんと不届きなやつだ」

 え、まってこの人がMADと呼ばれた理由がわかったかもしれない。

「あの人面倒な人だよなあ」

 上官相手にそれはいいのか、まじで。

「さてでは仕事(笑)の話をすることにしようか。

 さっき行ったとおり君が作ったものの量産をしてはくれないかい」

「それは何度も言うように無理なんですよ」

「それはなんでだよ」

 確かに俺の身の確実な安全はまだ保証をされているわけはないが

「ABCビルダーは完全に壊れました」

「はっ、はあぁ」

 DrMADと部下たちは呆れが純度100%で作られたため息を吐いた。

「直せないんですか」

 部下の一人が落ち着いた顔にかえて問いかけてきた。

「それは、ABCビルダーそのものが実は試作品で、先端のノズルの耐久を急速に削ってしまうものなんです」

「ちなみにノズルはどのようなものを使ってるんですか」

「アーゴクの業務販売型の大型加工機などを入り組んで合わせてます」

「あっ、うちじゃ換装用のパーツが用意できません」

 デスヨネー

「ですけどそれでも働けとゆうのであれば、私のモービルなどを使わせてもらえませんか」

「あの人聞いてくるからちょいまってくれえ」

 DrMADは体をひるがえし通話を始めた。

 にしてもだ、ここの整備システムかなり高品質なのでは。

 ブロックタイプのモービルの換装作業はもちろんあそこにあるのは繊細なパーツ修理用の設備が一通り揃っているように見える。

 ここはモビルルオンリーの整備ブロックのようだが、あそこの恐らく輸送用のゲートの向こうには港かはたまた整備ブロックだろう。

 てかそうじゃなきゃなんのためにおいてあるのか少し疑問が生まれ。

「とりあえず君に割り振る仕事によって認可を下ろすか分けるって言われちゃった」

 んっ、そんなにしぶるくらいなら俺を捕まえて尋問でもなんでもすればいいのにまじでここの人員不足と管理体制に不安を覚えるんだが。

 使うなら使う、使わないなら使わないが分けられないのだろうか。

「じゃあとりあえず仕事くれませんか」

「おお、やる気だねえ。

 いいよこっち来てくれ」

 そう言われ俺はほぼ手を引かれるような構図で、ブロックの中でも一番上の移動用の足場から落とされた。

 一番下の足場に叩き落された。

 目の前にあるのはそれこそこの前魔改造した期待と同モデルの量産機体だった。

「こいつをこの前のやつほど魔改造しなくていいから動くようにしてくれ、これが機体の状態でこれが君の使って良い設備一覧ね」

 タブレットをさっと、渡された。

 これはかなりありがたい、てかどうしてだよ。

 こんなに良い設備があるのにこんなひどい状態の機体を実戦配備レベルまで修理しなくてはならないのか。

 確かにこの機体のフレームは人類の総力の結集したと言われているほどの完成度で、パーツと知識さえあれば劣悪環境下でも修理できると言われている超高性能なものなのだ。

 それにこれだけの加工設備さえあればある程度はいけるか。

「だいたいどれくらいけるようにしておけばいいんだ」

「ああ、それに関してはこれを基準にしてくれ」

 そう言いながらタブレットをタップした。

 馬鹿げていやがる、出してきた基準はこのモデルの機体の新品の出力を最低でも80%をこえろといってきやがった。

 めんどくさい、たしかに可能ではあるしかしだ。

 極めて精密で自動化もできないような内容のものを逐一調整しなくていけない。

「ちなみに俺の支援AIは」「1機だけです」

 カブり気味ってかかぶりながらそう言われた。

 まあ、一機とはかろうじて話になるレベルは許された。

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