第33話 粛清する転生者02
「・・・つまり、転生者を殺してまわれと?」
「うん。大変申し訳無いんだけどあそこの管理をしている創造神も困っててねぇ」
交通事故にあって死んだと思ったら変な酒場の前に立っていた。
なにを言っているか自分でもわからないんだけど、でも起こったことをあるがままに話すとそうとしか言いようがない状況だった。
なにこれと混乱していると、中から店長さんが出てきて中に案内される。
お茶をいただいたところで状況を聞いた感想がこれである。
「なんでそんな事になってるんですか? 困ったから異世界召喚をしてるんじゃないんですか?」
「いや、あの世界は別に異世界召喚しなきゃいけないほど困窮はしてないんだよ。すでにそんな脅威はそんなに存在しないし」
聞けば過去の勇者召喚ですでに脅威は取り除かれており、以降そういった問題は発生していない。
加えて、脅威が発生した原因もわかっていて、すでに対策も取られている状況で非常に安定しているらしい。
「そんな状況でなんで殺して回らないほど召喚された人がいるんです?」
「異世界召喚を管理している教会内部の派閥争いが原因かな。あと、召喚技術が確立されちゃったから定期で呼び出すんだよね。技術が廃れたりしないようにって」
「な、なんてはた迷惑な。というか、なんでこんなことになるまで放置したんですか?」
「放置したのは前任の創造神で、君に仕事をお願いしようとしているのは後任の創造神なの」
前任者は安定しすぎた世界に刺激を与えたくてあえて放置していたそうだ。
でも、異世界召喚は箱庭に負担をかけるのであまりやりすぎると箱庭が壊れかねない。
それでもある程度まではうまく管理していたらしいんだけど、際限なく召喚されるようになった結果、管理ができなくなってしまった。
結果転生者を引き抜かれた箱庭の創造神からの苦情がひどくなって、箱庭を別の創造神に管理させることになった。
で、引き継いだ創造神が最初にやったのは異世界召喚をできなくすることだった。
そういうすることでまず他の箱庭への影響を抑え、召喚者が増えないようにしたのだ。
けれど、すでに召喚されたものは戻せない。
彼らはみんなその箱庭の人達よりは強い力を持っており、普通に過ごすだけでも問題が起こりやすい。
いままでは新たな召喚を行って対処していたがそれができなくなったいま、他の方法を取るしかない。
「で、召喚された人たちを殺して影響を削ぐということですか? やりすぎじゃないです、それは」
「ある意味、彼らも被害者だからね。でも、チートを得たことで犯罪を繰り返している人については自業自得じゃないかな」
「まぁ、そういう人はだめですよね」
「基本的に創造神は箱庭を管理するだけで、干渉は殆どできないんだ。召喚された人たちから力を取り上げるには一度死んで今の君のように転生または生まれ変わる前に力を剥奪するしかない。けれど彼らは簡単には死なない力を持ってしまっている。ならもう誰か殺してもらうしかないんだよ」
「それで、自分が選ばれたと」
「うん、これがあの箱庭では最後の異世界召喚になる。君を召喚するのは教会の枢機卿の一人。召喚者の力に頼らず自分たちの手で世界を守っていかなければならないと憂いた数少ない人だよ」
創造神はこの人物に神託を出して君の保護を命じたそうだ。
「一つだけ質問があります。これが最後の召喚だとして、粛清が終わった後はどうすればいいのでしょうか?万一、俺が暴走した場合は誰が止めるのですか?」
今のダメな連中は俺が止めるとして、問題は俺が対象になった場合はどうするのかということだ
「それについては君が転生する際に保険をかけるそうだ。と言っても、問題がある場合は警告が入るそうだから、気づかずに暴走するということはないだろう。あと、監視がつくとも言っていたな」
「監視ですか?」
「あぁ、君のサポート役でもある。ここで身につけるチートとは別のチートだよ」
監視役ではあるが、暴走したりしない限りは普通にサポートしてくれるだけの使い魔のような存在なんだそうだ。
「そんなわけで、すまないがよろしく頼むよ」
そうして、酒場での生活が始まった。
店長さんが親身になって相談に乗ってくれ、何度もスキル構成を見直しながら日々は過ぎていった。
「少し大変になるけど、全部終わった後のことも考えておいた方がいい。頼まれたことを達成するだけのスキル構成でも大丈夫だと思うけど、やりたいことがあるならそちらに関しても習得して行った方がいい」
そういって、スキルを山盛りにして滞在期間が増えた時は困ったけれど、以前からやりたかったことに必要なスキルが一通り身につけられたのだからそこは結果オーライだろう。
予定したスキルの習得が終わり、当面の予定を決定した後、俺は箱庭へと転生していった。
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