第12話 先に来た伝説

「レベル八十二って、高いですね。あと、固有スキルってこんなに多くなるものなのか」

「これ不老不死ってことだよな? 百二十五才ってとんでもないんだけど」

 夕彦と圭人が口々に述べる感想に、上条が腕を組みながらうんうんと満足気に頷いている。

 どうやら気にして欲しいところはその辺だったらしい。


「色々と教えるから、とりあえずお茶でも飲むといいよ。ストレージには水しかなかったでしょ?」

 あの神様も違うもの入れておいてくれたらいいのにねなどと言いながらそれぞれの前に置かれたマグカップには、湯気のたつ香りのいいお茶が入っている。

 この世界のお茶はチャノキのような灌木で、地球との違いは一本一本色味が違うことくらい。淹れ方も四人の知っている方法とそれほど違いがない。


「暖かくて美味しいです」

 一口飲んでほっと息をついたありすが、にっこりと微笑んだ。他の三人も一口飲んでは礼を言っている。緊張の糸が解れてその場の雰囲気が柔らかくなる。


「さて、どこから話そう。俺がこの世界に来た時のことからがいいかな?」

「何年分かわからないけど長くなりませんか、それ」

 夕彦に突っ込まれてあははと笑う上条に、圭人が少し呆れる。

 外見は少々とっつきにくいほどの美形だが、中身はかなり気さくなようだ。


 部屋の中を見渡すと、玄関から入ってすぐにあるリビング。部屋の隅に日本でよく見たアイランドキッチンがついている。

 正面から見て左側に大きな窓がついている。ガラスがはまっているが形は少し歪。

 リビングの奥にはさらに奥に続く廊下と、扉が二つついている。


「簡単にいうと、俺は神の頼みでこの世界に来て、魔王を倒して現在隠居中」

 あまりにも簡単すぎる説明にありすは驚く。

「魔王ですか? 隠居?」

 実年齢はともかく、外見年齢はそこまでに見えないため、隠居という言葉に違和感を覚える。


「白い人はそんなこと言ってなかったけど」

 自分たちが言われたのは、魔素の循環のために世界を旅してほしいと言われただけだ。光里がそう説明すると、上条は一つ頷いた。


「俺たちは魔王を倒したあと引きこもっちゃったからね。魔法もスキルも最低限しか使わないし」

「俺たちですか?」

 自分たちのように上条も四人で来たのだろうか、そう聞くと全く違う答えが返ってくる。

 

「俺は親友と二人でこの世界に呼ばれた。あいつと一緒だったから魔王を倒せたんだ」

「では、その人は今?」

「遠い国で竜退治中。やつは戦士でね。普段は冒険者やって暮らしてる。あと二、三年は戻らないんじゃないかな」


 あまりにあっさりと二、三年をほんの数日のような感覚でいう上条に、不老不死とはこういうことなのかと、ありすは思った。 


「そこでだ、君たち少しここで修行しないか? スキルの使い方、一般常識、あとはこの世界の地図かな。俺が教えてあげるよ」 

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