第11話 出会い
草や毛皮の山がありすのスキルで服に変化していくのは、不思議で面白い光景だった。
サイズ違いのシャツが四枚、ズボンが四本。
それぞれの体型に合わせたものが一瞬でできるのはとても便利。
「う〜ん、色をつけたら目立っちゃうかな。どうしよう」
出来上がったシャツの手触りを確かめながら、色をつけたいありすが考えこむ。パーソナルカラーは大事にしたい性質らしい。
植物があれだけカラフルなのだから色をつけてもいいのではないかと考える。
「さっきの人が来ていた服は草の色に見えたから、色はつけないで良いんじゃないか?」
服の色などどうでもいいと言わんばかりに、圭人はさっさと服を着替える。
貫頭衣はスカートを履いているようで少々落ち着かなかったのだ。普段から着ている服に近いものはやはり安心する。
「他の住人の服を見てから、考えた方が良いわね」
光里はキョロキョロとあたりを見渡し、背の高い草の間でさっさと着替えをした。女子高生は服を着たまま着替えるのが上手い。
「どうして一軒しかないんでしょうね」
着替え終わった夕彦が両手に刈った草を抱えている。
今使った分を補充しておくためだ。ありすがストレージにしまうのを確認してから、草の匂いがついた手に浄化をかける。
「準備完了、行ってみようか」
初めての異世界人、鬼が出るか蛇が出るか。
油断だけはすることのないようお互いに言い聞かせて彼らは足を踏み出した。
家の外観は平家の洋館といったところか、遠くから見た時よりずいぶん奥行きがあって中は広そうだ。
赤茶色のレンガで出来た壁に焦げ茶色の屋根。煙突も立っている。
ファンタジーの世界から抜け出したような家だった。
家の外に出ていたのは線の細い成人男性だった。
ありす達から見ると30前後というところか、長い茶髪に榛色の瞳をして整った顔をしている。
身長は圭人とそう変わらない。
「すみません、この家の方ですよね」
四人を代表して夕彦が声をかける。
外見的にも人当たり的にも、一番交渉に向いているのが夕彦だった。
「ああ、そうだが。……君たちは、もしかして『神様の落とし物』かい?」
「え?『神様の落とし物』ってなんですか?」
男はため息をつくと四人を家の中に招き入れてくれた。
見知らぬ人間を簡単に家に入れて良いのか問う彼らに、男は微笑む。
「心にやましいものを抱えた人間に、この家は見えないんだよ。ここは賢者の家だからね」
その言葉に夕彦が反応する。
「貴方も賢者なんですか?」
「ああ、君もそうなんだね。そうだな、俺を鑑定してごらん?」
そう言われて、夕彦は男を鑑定する。
しかし、名前もステータスも何も見ることができなかった。
「できないだろ? ほら、ステータス」
ニヤリと笑った男は、出てきた画面を四人に見えるよう表示した。
上条静流/カミジョウ シズル 125才 男
職業/賢者 レベル 82
STR 180
VIT 205
INT 400
MID 480
DEX 210
AGI 130
LUK 30
固有スキル/詠唱破棄、隠蔽、転移、杖作成、結界、超回復、不老、二重詠唱、不死
「え、日本人?」
ありすの驚く声に上条の方が驚く。
「待って、驚くところはそこ?」
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