第5話 検証は大事

 どうやらスキルを使うと経験値が貯まる仕組みらしい。

 それならばと光里は傷のない肌に回復をかけてみたが、何も起きなかった。


「ダメね、何も起きない。経験値も入った感じがしないからスキル自体が発動してないんじゃないかな」

「光里ちゃんは回復をかけるとレベルが上がるのね、でも何もないのに怪我するわけにもいかないし、どうしようね」


 経験値を貯めることはゲーム的に考えると必要だと思う。

 この先何が起きるのかわからないなら序盤のレベルは高ければ高い方がいい。特に今は死んでしまったら終わりな現実だ。

 だが、自発的にわざと怪我をするなどというのは勘弁してもらいたいと男二人も考えていた。

 この場合、ありすと光里に怪我をさせるくらいなら自分たちがそれを負うしかないから。


「それはおいおい考えようぜ、それより、もう剣が作れなくなった。どうやらMP切れらしいな」


 圭人の足元にはロングソードがきっかり五十本転がっている。

 周囲の土が薄く抉られ草がごっそりとなくなり、その部分だけ初めから土肌が剥き出しだったようになっていた。


「体に変化はないですか? レベルは?」


 剣をストレージにしまうのは一瞬で、圭人が剣の山に手を翳し、念じるだけで済んだ。

「特に変化はないな、レベルは、ああ、五になってる」


「それなら僕とありすもレベルを上げたいところですが……、ありすはスキルの使い方ってわかりますか?」


 夕彦は自分のステータスを表示させた。


 固有スキル・詠唱破棄。


 詠唱する元の呪文など知らないのに破棄だけあってもなと、夕彦はそっとため息をつく。


「夕彦くん、スキルは頭の中を探せば使えるみたい。私、使える」


 目を閉じ、採取したリフレ草を手のひらに置きながらありすはゲームで見たポーションになるようにと想像する。現実でそんなものはないので、知識ではない、ただの想像。でもそれは失敗しないとなぜか確信していた。

 シュワっと光の泡が出現し、草が虹に包まれたように奇妙な形に変化していく。目を開いたありすが見たのは小瓶に入った緑色の液体だった。

 すかさず鑑定をかける。


 ポーション・リフレ草から作られたポーション。傷が治る。体力は回復しない。


「頭を探るですか? ああ、こういうことか。色々な系統の魔法が頭の中にインプットされている感じです」


 今使ってみるのに無難な魔法は何かと考える。


 光魔法・ライト。


 声に出さず心の中で念じてみると、目の前に直径五センチほどの光球が現れた。


「これだけ明るければ夜も安心かな」

 光球を見ながらありすが微笑む。


 これから森の中で一晩明かさなければならないのだ、ここを抜けるにはあと一日はかかるだろう。

 四人とも健脚だったことは幸いだった。

 一番体力がないのはありすだったが、それでも普通の女子高校生としては動ける方だろう。


「歩けるところまで歩いて野宿だな。方角は、あってるのかな」

「あ、ちょうどいい魔法があるから使ってみましょう。探索」


 夕彦の脳裏に周辺の地図が広がる。魔物の気配はここにはない。

 それでも油断は禁物なので黙っておく。そういうことを圭人に知らせると途端に気を抜くのだ。

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