二人に会いたい

 もうすぐ誕生日がやって来る。このままじゃまた2018年に行き佐伯さんにも出会えないんだろうか。

彼はどうしてるんだろ。

きっと陽菜に出会ってるよな......。


陽菜、会いたい。

それに俺は佐伯さんにも会いたい。病院は聞いてある。

どうする 行くか、行かぬか。

誕生日を超えたらもう会えないかもしれない。


 いつも人任せの臆病な俺は佐伯さんの病院へ向かった。

病室へ入ると、前より小さくなった佐伯さんがいた。

見た目とは違い、俺を見るなり少年のように元気な声を出した。


「かずちゃんさん!遅いです」

「佐伯さん!大丈夫.....じゃないか。」

「生きてるうちに会えてよかった。いや死んでますけどね。」


「僕のスマホ取ってください、充電してるやつです、はい。」


 陽菜に会ったかや、調子はどうかやら聞く前に慌ただしくスマホを手に真剣に何かを打ち込んでいる。


「どうしたんですか?佐伯さん」


「よし。あっ、もうすぐ僕回診なんで、かずちゃんさん一階の中庭みたいな木がある場所で待っててください。ベンチもあるし、たまには外の空気吸いたいので」


「わかりました。じゃあとで、ゆっくり」


 俺は言われた通り中庭のベンチに腰掛けた。

待つこと30分.....遅いな。回診ってそんなに長くかかるもんかな。


 と、中庭と外来待合室を挟むガラスのドアがガラガラと開いた。佐伯さんかなと左へ目をやるとそこには、扉に手を付けたまま立つ陽菜が居た。


「陽菜.......」

「かずちゃん」


もしかして、佐伯さんが......。


 また振返って陽菜が走り去るんじゃないか。

 俺は緊張でベンチから立ち上がれずにいた。


 ゆっくり陽菜は中庭に足を入れガラス戸を閉めた。

俺の足元に視線を落としながらベンチに、ひと一人分ほどを開けて座る。


「陽菜 大丈夫なのか?」

あ、俺 普通に聞いてしまった......


「かずちゃん、どうしてここに?」

「いや、あ.....ん」

「ふふ 大丈夫だよ。かずちゃんは?元気だった?何してた?」


 いつもと変わらない穏やかな笑顔で質問を連発する陽菜を見て、俺には寂しさが込み上げた。


「何してたって......陽菜を探してた」


沈黙 滅多に訪れる事が無かった陽菜との沈黙


「かずちゃん、私」


「陽菜、どうして独りで居なくなるんだよ。どうして勝手に決めるんだよ.....俺は、陽菜と一緒に生きたいんだ」


「かずちゃんは、ハンサムだし優しいし一緒に居たら楽しい人。だからいくらだって、好き同士になれる人が現れるよ......」


 現れないよ。クソババアと見合い結婚するだけだ。


 そりゃ前回は陽菜を探すのを諦めて、ふて腐れて、どうしようもない俺だったけど。

もう一度陽菜に、過去に戻って会えて俺は嬉しかった、会いたかったんだ。


「あ、陽菜 指輪」


 陽菜がサファイアリングを着けていた。

俺の一言に、気不味そうに右手を重ねて隠す。


「嬉しかったから......これ、もらって、本当は......嬉しかったから」

と、たどたどしくいつもの鼻にかかる声が、さらに鼻にかかる。泣いてるのか......陽菜


こちらを向いて顔を上げて微笑むとともに陽菜の大きな瞳に溜まっていた涙が一気に溢れた。






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