出かける前には準備だよ

夏休みはすぎるのが早い。

もうとてつもなく早い。

気がつけば七月は終わっていて、次に気がついたときにはもう一週間しかなくなっている。


ただでさえ早い夏休み、美少女と一緒にいればその早さは倍以上になる。

もはや、夏休みはボルトを超えている。

世界選手権優勝できちゃう感じ。


そのぐらい早い夏休み。

何を隠そう、今日はなんと夏休み終了までちょうど一週間の日だ。

うん、早いね☆


あの僕が川に落ちる事件の後、ありすさんと一緒に山に登ったり、ありすさんと一緒に虫を捕まえたり、ありすさんといっしょに…………。


彼女とたくさんのことをした。

それでも、まだ一言二言しか話してくれないけれど、おかげさまで僕の英語力はぐんぐんと伸びている。


…………僕はこれを喜んでいいのか悲しむべきなのか…。


ま、なぁ、何かができるっていうのはいいことだよね!うん、いいことだよ。うん、きっとそう。


「ありすちゃんできたわよ。」


僕が自身を失っていると、お母さんのそんな声が響いてきた。

ついで、ガラガラガラとリビングのドアが開く。


「ほれ、どうよ?」


お母さんがとくいげに見せたのは………


「うわぁ……」


浴衣を着たありすさんだった。

淡い水色を基調として、赤や黄色など色とりどりの花が書いてある浴衣を着たかのじょは…………とんでもなく美しかった。

うん、もう死んでもいいってレベル。


「…………How about?」


少し恥ずかしそうにしながら、小さな声で聞いてくるありすさん。

やっべぇ、僕今日死ぬのかもしれない。


「かわ………」


僕は日本語で言おうとして、とめた。

彼女がわざわざ英語で聞いてきたということは、その返答も英語のほうがいいだろう。


えっと、これは…………。

よし。頭の中で英語を組み立てた僕はなるべく自然に、


It's too beautifulきれいすぎる


そう、素直な感想を述べた。

もう本当に、幸せです。


「ちょっと準備に時間かかっちゃったね、ごめんごめん。じゃあほら、行ってきな。」


お母さんが僕とありすさんの背中を押して笑う。


「いってきます。」


僕は見慣れたその笑顔を背に、玄関を出た。


「いって、きます。」


ありすさんも振り返りそういって、トコトコと僕の方にかけてくる。


「はいよー。楽しんでねぇ!」


お母さんの元気なその声とともに、僕と彼女の夏祭りが始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る