川遊びには代償が

「うぉぉ!つめてぇ!!」


僕は小川の流水に足をつけながら叫んだ。


「…………。」


無言のまま僕と同じように足を川に入れたありすさんも、こころなしか楽しそうに見える。


彼女はいま紺の短パンに濃いめのグレーの半袖シャツを着ている。

そう、僕のやつだ。


彼女の着替えを見ようとバックを開けたんだけど、中に入っていたのは白のワンピースに、白のシャツに黒のスカートに…………。といった感じの確かにかわいくてきれいなのだけど、汚れちゃ絶対困るだろって服ばかりだった。


なのでしかたなく、僕の服を着てもらっているわけだ。


「…………。」


足をバシャバシャと動かして、かぶった麦わら帽子を抑えるありすさん。

やっべぇ、めっちゃきれいだ…………。


幸いなことに僕と彼女の身長はそこまで変わらなかったので、うまいこと着れているのだけど。


馬子にも衣装とは言ったものの、やはりもとがいい人は何を着てもきれいなんだよなぁ。うん、最高。


「あっ!」


僕がそんなことを川で突っ立って考えていると、足の隙間を何かが通り過ぎていった。


「魚だっ!!」


よくよく見てみると、川には指より小さい小さな魚から、手ぐらいの大きな魚まで色な種類の生物が住んでいた。


「…………捕まえたいな。」


僕は一生懸命川の流れに逆らって泳いでいる魚たちを見て、そうつぶやく。

なにか動く生き物を見たら捕まえたくなっちゃうのが、小学生男子。


「よぉし!!」


僕は腕まくりをして、魚たちへと対峙した。

ぜったい捕まえてやるぞぉ!!!!

  

 ◇ ◇ ◇


「疲れたぁ……。」


川岸のありすさんの横に座って僕はへとへとになってつぶやいた。


あの後かなりの時間魚たちと文字通り死闘をくり広げたのだけど、結果は惨敗。

一匹も捕まえられなかった。


あいつら、石の裏とかに隠れるのは卑怯だろ……。


「もう帰ろうか?」


僕はもうそろそろお昼のチャイムが鳴る時間だからと、立ち上がりながらありすさんに尋ねた。

彼女は僕が魚と戦っている間も、ここに座って足先だけを水につけてじっとしていた。


そんなのじゃつまらないと思うけど、彼女は変わらない表情のままいたし、楽しいの………だろう。


「…………。」


首を小さく傾けてうなずいた彼女は、僕のように立ち上がろうとして、


「……っ!」


コケた。

これがただコケただけならいいんだけど、ここは川岸。

このまま行けば彼女は川にダイブすることになる。


小川だから流されることはないだろうし、そんなに高さだってないから怪我することもないだろうけど、濡れてしまう。


僕の服なんてどうでもいいけど、彼女が濡れてしまうのは、だめだ。


僕は傾いていく彼女の体に向けて、手を伸ばして


「掴んで」


と叫んだ。


少しの間のあと、ありすさんは僕の手をがっしりと掴んでくれた。


「よっし!!おんりゃぁぁ!!!」


僕は彼女の手を強く握って、踏ん張りながら叫ぶ。

やっやばい…………し、死ぬぅ!!!!


僕がもうだめかと思ったとき、ありすさんの心配そうな顔が目に入ってきた。


「さんりゃぁぁぁぁ!!!!!」


それを見て僕は最後の雄叫びを上げ、全身全霊で彼女の体を岸の方へと引っ張った。


「っ!!!」


その結果。


「はぁぐしょん!!」


僕が川に落ちて軽めの風邪を引きましたと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る