夏祭りを抜き切ろう

「何かしたいものある?」


僕は夏祭りの屋台が立ち並ぶ大通りの入り口で隣に立つありすさんに尋ねた。


「…………。」


もちろん反応はなっし!!

もう僕は無視されるのにはなれたよ。


「そうか……。」


彼女が何も言わないのであればと、僕が考えているとちょんちょんと服の裾が引っ張られた。


ありすさんを見ると、入口付近の大きな屋台を凝視している。


「あれ?」


僕はその屋台を指差して尋ねた。


「…………。」


ありすさんからは相変わらず反応がないが、こくりこくりと肯定は示してくれている。


「オッケ」


僕は彼女が行きたいと言った屋台に向けてあるき出した。


「…………。」


少し立っても彼女の気配がしないので振り返ると、さっきの場所で突っ立っていた。


あぁ、そういうことか。

周りを見て僕は納得する。


町一番の夏祭りというだけあって、人はたくさんいて彼女は歩きたくても歩けないのだ。


「手、繋ごうか?」


僕は人混みをかき分けて彼女のもとまで行って、そう尋ねた。


「…………。」


ありすさんは無言で差し出した僕の手を握る。

表情は変わらないけど、少しだけ喜んでいるような気もしなくもない。


「おじちゃんこれ一つ」


僕らは手をつないだまま『型抜き』の屋台までたどり着くことができた。


型抜きっていうのはピンクの甘い板状のお菓子にいろんな動物や植物の絵が書かれているから、それをその形通りに針とか爪楊枝でくり抜く遊びだ。


一回百円でできるけど、上手く切り抜ければなんと逆にお金をもらうことだってできるのだ。


まぁ、僕はちゃんと切り抜けた試しがないけど。


「難易度は?」


おじちゃんが僕を見て言う。

型抜きには沢山の種類があって、その柄によって難易度が変わる。

そして、一番かんたんなのから10、50、100、500、1000円と成功したときにもらえる金額も変わってくるのだ。


「かんたんにする?難しくする?」


隣のありすさんに聞く。

僕はどっちにしろ失敗するから、難易度なんてあまり関係ないのだよ。


「……This.」


見本の図を見つめて、彼女はそういった。

その目線の先には100円の型抜き。


難易度で言うとちょうど中間のやつだ。

型抜きは一律で一回100円だから、これを成功できればお金は払わなくていい。


「じゃあ100円の2つ。」


僕は財布から200円を出しておじさんに渡す。

ちなみに、このお金はお母さんからもらったので、僕のお小遣いが減る心配はない。


「はいよ。」


おじさんはお金と引き替えにピンクの薄い板を2枚渡してくれる。

これだけ見ると怪しげだが、この板はただ甘いだけだ。


「うわぁ思ったよりむずそう」


僕は渡された方を見ながら、切り抜きスペースに移った。


「…………。」


ありすさんが黙々と作業をすすめる横で、


「うーーん、ムズイなぁ。」


僕は終始唸っていた。

…………僕、こういう細かい作業苦手だから。

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