年齢相応の心理描写とPTSD描写、そしてキャラの個性が見事

あんまり見事なので思わず一気読みしてしまいました。

9歳の少女という目線の解像度が非常に高いです。
年齢相応のものの見え方・捉え方、そしてその心理描写が実に巧みに描かれており、世界観の見せ方の技巧の高さも相まって、没入感に浸って作品にのめり込むことができます。
それ故に、PTSDの描写もかなり生々しく、肌に張り付くような感覚すら感じられます。
そして、そこからの立ち直り方もリアリティの面でかなり精巧に描写されているため、トラウマが徐々に癒えていく、カタルシスに似たものがじんわりと効いてきます。
とにかく、メンタル系の病理に対しての知識量と描写精度がエグイくらい高くて、本当にただただ感心するばかりです。

その一方で、安直な属性付けに頼らずともキャラクターの書き分けがかなりしっかりとできており、それぞれの個性がしっかりと立った表現がなされているのも見事です。
こう、登場キャラにぼやけた感じのどうでもいい人が一人もいないというのは、キャラが増えれば増えるほどなかなかに難しいのに、なかなかどうして見事なんですよね。

お話の流れに関してもシリアス一辺倒というわけでもなく、日常の温かみを感じるシーンや、ちょっと抜けてる笑わせポイントなどがバランスよく描かれており、1話あたりのボリュームがかなり太いにもかかわらず、読んでいてさほど疲れないというのもポイントが高いです。

じっくりと心に寄り添うような芯のある作品をお求めの方には、強くお勧めできる作品です。

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