第14話 奸計 前編

 帝国花の都”京”には、その名のごとく偉い人が多くいる。筆頭は今上陛下。次点として内閣総理大臣以下内閣閣僚である。

 内閣の閣僚、その側近達は日々入ってくるあまりにも多い仕事をこなす。宮内省の重鎮、挽歌義朝ばんかよしともはその中でも珍しく暇を持て余していた。

 理由は単純に自分が手掛けていた一大事業が終了し、その手引書を作り、自分が要らなくなった状態から何も変化していないからだ。

 彼は一応出勤はしたはもののひましている。

 しかし、ただただ彼はボーッとしているわけではない。

 一心不乱に机に向かって筆をすすめている。

 それを見ている挽歌付きの同じく暇している補佐官がチラ見しようとしている。

 そんな補佐官(陸奥俊義むつ  としよし)が目にしたのは、挽歌の細君への手紙だった。

 仕事をしているばかりとてっきり思ってた補佐官は

(あーあ)

と思う。

 ジリリリリリ、ジリリリリリ、カチャ

 挽歌の黒電話が鳴った。

 彼は細君への手紙を書くのを邪魔されてしまったことに強い不快感を感じたのか唇の端を強く強く歪めている。

 しかし書くことは電話をさっさと終わらせてしまえばそれまでのこと。電話に出た。

 最初は普通に話していたものの、徐々に「はい、はい、」と冷や汗らしきものをかきながら相槌を過剰なまでに打つ挽歌。

 仕舞いには__了解いたしました__と言って電話の切れた音がするのに固まって黒電話を片付けようとしない挽歌。

 なんか嫌な雰囲気を醸し出し始めた挽歌。

 そんな上司と電話の内容に恐怖感を補佐官が覚えるのはそこまで時間がかからなかった。

 今なら抜け出せる。そうすれば厄介事には巻き込まれない。その代わりに社会的信用を失い、職を失い、金銭に困るのは必至。

 補佐官が選んだのは


「挽歌大輔様、何があったのでしょうか?」


 厄介事に巻き込まれることだった。

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大和日本連合 秋田川幸政 @akitagawa0yukimasa660

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