山頂に続く階段は、八人分くらいの高さがある。石造りの隙間から雑草が生えているが、踏まれてすり潰されていた。手すりはあるが、生い茂る草木と、こびり付いた錆せいで使う気にはなれない。

「意外に高いな」

 素直な感想が漏れた。本当は大したことはないが、雨のせいで気が滅入ってこんな言葉が出てしまったのかもしれない。

「この階段が一番近いんだ。他の道はお散歩用に長く作ってあるから、えっと長いぞ」

 そういって高耶は先に階段を登る。二人並んで歩ける幅はあるが、そうすると肩に脇道の雑草がぶつかる。今日は雨の雫で服が濡れてしまうだろう。

 次に紫乃さんが行き、俺が最後に登る。両脇の草木を避けているので自然と綺麗な一列になった。高耶の歩く速度と紫乃さんの歩く速度には結構差があって、高耶は八段ほど登ってから止まって待つ、ということを繰り返している。

 そうしながら階段を登り切ると、参道がひらけた。くすんだ木で出来た拝殿が見える。その後ろにはもう一つ建物があり、その後ろにはさらに山が続いていた。

「へー。結構見晴らし良いじゃん。学校も見えるね」

 紫乃さんが後ろを振り返り学校を指差している。少し左のほうに学校が見えた。四階建ての学校がかなり目立つのは、ほとんどの家が一戸建ての低い家だけだからだと気がついた。学校から少し左側の彼方には通学に使っている駅がわずかに見える。

『琥珀』も探してみたが、見つけることは出来なかった。

 高耶は、俺たちとは反対側の、拝殿の向こうを眺めている。

「高耶、星はどうだ」

「やっぱり、向こうから学校側に流れてる。ただ、もっと上に行かなきゃよく見えないな」

「向こうって、行けるの?」

 紫乃さんが心配そうに聞いた。高耶はそのまま拝殿の向こう側に進む。

「確か、あったと思うんだけど、あ、やっぱりあった」

 その声を聞き、高耶の元に行く。その先は、全く舗装されてないが、確実に道として確保されていた。山の上に続く道と、下に向かう道がある。さっき言ってた散歩道なのだろう。

「上に行こうか」

 高耶がそう言って、上に向かう道に進む。

 その道は一列で歩いても肩が草木にぶつかるような道で、滴ですぐに濡れた。細く足場も悪い。歩きづらい道だ。

 脇には手すりがなく、少し危ない。大きな段差には岩が埋められていて、そこを階段のようにして登るのだが、雨に濡れているせいでよく滑った。

 ただ道を歩く。靴に染み込んだ雨水は冷たくはないが、とても不愉快だ。

 特に喋ることはなく、ひたすら上を目指す。ただ道なりに歩いているだけだが。こんな泥道を進むなら、前もっていって言ってくれれば良かったのにと、少しだけ高耶を恨んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る