5
そのまま歩いていると、少し陽の光が強くなった。雨が止んだわけではないが、雲が薄れたのだろう。暖かさが体を包む。天気雨に変わったのだ。俺は天気雨の異様な風景が昔から好きだった。
「ねぇ、結構歩いたよね。いつ上につくの?」
紫乃さんが音を上げた。運動靴が泥だらけになっている。近づかなくても分かるくらい足首が赤くなっていた。
「なに、まだ歩き始めたばっかりじゃんかよ」
先頭に立つ高耶は後方の俺たちを気にしながら、そんなことを言っている。
少しだけ進んだところで道が広くなる場所があり、そこで高耶が動きを止めた。
「よし、休もうか」
高耶は背負っているリュックを開け、中からレジャーシートを取り出した。一人が座れるくらいの大きさのものだった。
「ほら、紫乃。座れよ」
「え、いいよ」
紫乃さんは断っている。しかし、俺も紫乃さんが座るように声をかけた。
「足も赤くなってるし、座った方が良いんじゃない?」
そうして、すこし逡巡してから、紫乃さんは遠慮しながらも、渋々シートに近づいた。座ろうとするが、しゃがみ辛いようでなかなか腰を下せないでいる。
「なあ、咲太。手、貸せば?」
「高耶も一緒に手伝ってくれよ」
「そうだな。そりゃそうだよ」
また高耶が妙なテンションになっていた。そんなのには構わずに俺は紫乃さんの横に立つ。自分の傘を畳んで脇に置き、紫乃さんの傘を受け取った。
高耶は俺と逆の方に立っている。
片手で傘をさし、開いている方の手で紫乃さんの手を掴む。高耶の方も同じようにして、ゆっくりと紫乃さんは腰を下ろす。手は冷たくサラサラとしていた。
ドシ、とお尻が地面につく。
「ありがと」
紫乃さんはそのまま座り込んで、自分の足を伸ばしながら揉んでいる。高耶が紫乃さんを支えていた方の手を閉じたり開いたりしていた。俺は少ししてから紫乃さんに傘を返した。
周りを見ると、木々の隙間から空や町が見えていた。まだ天気雨で、その中にある街は未知の感じがした。
街を照らす太陽は、まだ真上にない。
「ほら、飲み物」
高耶がリュックからペットボトルを取り出した。俺と紫乃さんのは少しだけ中身が泡立っている。
あまり喉は乾いていない気がしたが、飲み始めると全て飲みきってしまう。高耶は一口飲んでまたリュックにペットボトルを戻した。紫乃さんも一口だけ飲んでいた。
「普段履かない靴だから、少し靴擦れが起きちゃったな」
座り込む紫乃さんがペットボトルから口を離して言う。
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