7
昼休憩が終わり授業が始まる。ぼんやりとしていたわけではないが、あっと言う間に授業は終わり、放課後になる。
終わってすぐに、教室のドアが開き高耶が顔を覗かせた。
「じゃ、先に帰るわ。色々準備があるし。二人も早く帰れよ」
それだけを言うと、こちらが返事をする間も無く帰っていった。
「青柳くん、せっかちだね」
紫乃さんが笑っている。が、そんな風に言いながらも帰る準備をしている。
「私ももう帰るから。曽根くんも明日、遅れないようにね」
「分かったよ。じゃ、明日雨が降ってたら」
「そうだね。じゃあねー」
手を振り出て行く。紫乃さんは自分が進んで行く方だけを見ていた。
俺も机を片付ける。すぐに帰りたいところだが、『琥珀』で、買うものを見に行かなくてはいけない。二人には悪いが、それくらいはいいだろう。
教室を出ようとすると、後ろから肩を掴まれた。
「ね、ねえ」
独特な喋り方。ふり返る前に分かる。瑞樹だ。
瑞樹の声を聞くと、体に緊張が走る。彼に対するいい印象は全くなく、悪い出来事を運び込む予兆のように感じるからだ。
「なに? どうしたの?」
無視するわけにもいかず、ふり返る。笑ったように見える犬、を思い出させる表情で瑞樹は立っていた。
「あ、明日、なんだけど、えっと、あ、あの、咲太くんはなんか用事あるんだっけ?」
どこかわざとらしい言い方だ。瑞樹は昼休憩中もずっと教室にいたはずだし、きっと俺の明日の用事を知った上で聞いているんだろう。
「明日は、一応予定があるけど……」
「あ、あ、そうだよね。昼に色々話してたもんね」
「そう、だね」
俺の返事を聞いても、なにも言わずに笑っている。その気味の悪さに耐えられず、俺の方からまた話し始める。
「で、の用? なにもなければ用事があるから帰るんだけど」
「え、え、えっと。いや、そうなんだ。うん。ごめんごめん。じゃ、またね。咲太くん」
と言いながら、瑞樹はとくに動き出すこともなく、そこに立ち続けている。俺は瑞樹の視線を背中に受けながら教室を出た。
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