昼休憩が終わり授業が始まる。ぼんやりとしていたわけではないが、あっと言う間に授業は終わり、放課後になる。

 終わってすぐに、教室のドアが開き高耶が顔を覗かせた。

「じゃ、先に帰るわ。色々準備があるし。二人も早く帰れよ」

 それだけを言うと、こちらが返事をする間も無く帰っていった。

「青柳くん、せっかちだね」

 紫乃さんが笑っている。が、そんな風に言いながらも帰る準備をしている。

「私ももう帰るから。曽根くんも明日、遅れないようにね」

「分かったよ。じゃ、明日雨が降ってたら」

「そうだね。じゃあねー」

 手を振り出て行く。紫乃さんは自分が進んで行く方だけを見ていた。

 俺も机を片付ける。すぐに帰りたいところだが、『琥珀』で、買うものを見に行かなくてはいけない。二人には悪いが、それくらいはいいだろう。

 教室を出ようとすると、後ろから肩を掴まれた。

「ね、ねえ」

 独特な喋り方。ふり返る前に分かる。瑞樹だ。

 瑞樹の声を聞くと、体に緊張が走る。彼に対するいい印象は全くなく、悪い出来事を運び込む予兆のように感じるからだ。

「なに? どうしたの?」

 無視するわけにもいかず、ふり返る。笑ったように見える犬、を思い出させる表情で瑞樹は立っていた。

「あ、明日、なんだけど、えっと、あ、あの、咲太くんはなんか用事あるんだっけ?」

 どこかわざとらしい言い方だ。瑞樹は昼休憩中もずっと教室にいたはずだし、きっと俺の明日の用事を知った上で聞いているんだろう。

「明日は、一応予定があるけど……」

「あ、あ、そうだよね。昼に色々話してたもんね」

「そう、だね」

 俺の返事を聞いても、なにも言わずに笑っている。その気味の悪さに耐えられず、俺の方からまた話し始める。

「で、の用? なにもなければ用事があるから帰るんだけど」

「え、え、えっと。いや、そうなんだ。うん。ごめんごめん。じゃ、またね。咲太くん」

 と言いながら、瑞樹はとくに動き出すこともなく、そこに立ち続けている。俺は瑞樹の視線を背中に受けながら教室を出た。

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