しかし、なぜか高耶はそこに座らずに、あろうことか立って弁当を食べ始めた。

「前の人いないんだから椅子使っちゃえば?」

 紫乃さんがもっともなことを言う。なにより立って弁当を食べるなんて意味がわからない。それでも高耶は立って食べ続けていた。

「いいか、人間ってのはな、座っていればいるほど鈍っていくんだ。今こそな、狩猟の民だった頃を思い出さなきゃいけないんだよ」

 なぜか俺に向かってそう力説する。

「なにわけのわからないこと言ってるんだ。ほら。椅子」

 わざわざ椅子を持ってきてやると、高耶は口元がふにゃふにゃとした妙な顔をした。

 しぶしぶと紫乃さんが開けてくれていたスペースに座り、そして急に静かになって弁当の続きを食べている。

 それから淡々と弁当を食べていると、紫乃さんが高耶をひじで突いた。

「そういえば青柳君。昨日の話どうするの?」

 高耶が体をビクつかせたが、すぐに落ち着くを取り戻すと、物々しく言う。

「もちろん明日、決行するぞ」

 紫乃さんはいたって普通にそっかぁと返事をしていた。高耶が大げさな奴に見えてくる。

「安心してくれ。だいたいのルートは決めてあるんだ。とりあえず、明日は学校の門の前に八時集合。紫乃、咲太、分かったか?」

「オッケー」

「ん?」

 聞き間違いだろうか。明日決行されるなにかに、まるで俺も参加するような口ぶりだった。

 いや、本当は分かっている。高耶の中で俺の参加はすでに決められているのだろう。

「まあ、俺になんの確認もなく、俺の参加が決定してることは置いといて、一体なにをしに行くのさ」

「曽根君って損するタイプだねー」

 隣で紫乃さんが、他人事のように言っている。

「もちろん、星を捕まえに行くんだ。今回は第二弾ってことだな」

 星。またアレを捕まえなくちゃいけないのか。あの、高耶が持っていた気持ちの悪い星を思い出すと、気分が重くなる。

「なんでまたアレを取りに行くんだ?」

「もちろん、理由はちゃんとある。実はな、俺はずっと空に浮かぶ星を見てるんだけど、ここ二、三日の間に新しいのは生まれてないような気がするんだよ」

「なんでそう思うの?」

 今度は紫乃さんが質問をした。高耶は少し言葉を詰まらせてからまた続きを話す。

「星をずっと見てると、一つ一つが違う顔をしてるのが分かってきたんだ。さらに観察を続けてみるとだ、どうやら何グループかに分かれて順番に空を回っているらしいことにも気がついた。でも最近、新しいのは回ってこなかった。ってのが新しいのが生まれてないと思う理由」

「なるほど。高耶は一日中その星を見てるのか」

「まあな。授業中も窓からずっと見てるんだ」

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