5
しかし、なぜか高耶はそこに座らずに、あろうことか立って弁当を食べ始めた。
「前の人いないんだから椅子使っちゃえば?」
紫乃さんがもっともなことを言う。なにより立って弁当を食べるなんて意味がわからない。それでも高耶は立って食べ続けていた。
「いいか、人間ってのはな、座っていればいるほど鈍っていくんだ。今こそな、狩猟の民だった頃を思い出さなきゃいけないんだよ」
なぜか俺に向かってそう力説する。
「なにわけのわからないこと言ってるんだ。ほら。椅子」
わざわざ椅子を持ってきてやると、高耶は口元がふにゃふにゃとした妙な顔をした。
しぶしぶと紫乃さんが開けてくれていたスペースに座り、そして急に静かになって弁当の続きを食べている。
それから淡々と弁当を食べていると、紫乃さんが高耶をひじで突いた。
「そういえば青柳君。昨日の話どうするの?」
高耶が体をビクつかせたが、すぐに落ち着くを取り戻すと、物々しく言う。
「もちろん明日、決行するぞ」
紫乃さんはいたって普通にそっかぁと返事をしていた。高耶が大げさな奴に見えてくる。
「安心してくれ。だいたいのルートは決めてあるんだ。とりあえず、明日は学校の門の前に八時集合。紫乃、咲太、分かったか?」
「オッケー」
「ん?」
聞き間違いだろうか。明日決行されるなにかに、まるで俺も参加するような口ぶりだった。
いや、本当は分かっている。高耶の中で俺の参加はすでに決められているのだろう。
「まあ、俺になんの確認もなく、俺の参加が決定してることは置いといて、一体なにをしに行くのさ」
「曽根君って損するタイプだねー」
隣で紫乃さんが、他人事のように言っている。
「もちろん、星を捕まえに行くんだ。今回は第二弾ってことだな」
星。またアレを捕まえなくちゃいけないのか。あの、高耶が持っていた気持ちの悪い星を思い出すと、気分が重くなる。
「なんでまたアレを取りに行くんだ?」
「もちろん、理由はちゃんとある。実はな、俺はずっと空に浮かぶ星を見てるんだけど、ここ二、三日の間に新しいのは生まれてないような気がするんだよ」
「なんでそう思うの?」
今度は紫乃さんが質問をした。高耶は少し言葉を詰まらせてからまた続きを話す。
「星をずっと見てると、一つ一つが違う顔をしてるのが分かってきたんだ。さらに観察を続けてみるとだ、どうやら何グループかに分かれて順番に空を回っているらしいことにも気がついた。でも最近、新しいのは回ってこなかった。ってのが新しいのが生まれてないと思う理由」
「なるほど。高耶は一日中その星を見てるのか」
「まあな。授業中も窓からずっと見てるんだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます