厚ぼったいメガネこそ変わってないが、髪の毛が軽くなったように感じる。少しだけ外側にカールしているのだろうか。とても活発そうに見えた。

「あ、曽根君。体調どうなの?」

 教室のドアから顔を出している紫乃さんは俺に気がつき、声をかけてきた。怒っているだろうと心配していたが、まったく問題はなさそうだ。

「もう大丈夫。それと……」

 一昨日のことを謝ろうとしたが、思い出させてまた嫌な気分にさせるのも良くないと思い、言葉を飲み込む。

「なんか雰囲気変わったね。髪の毛にあってると思うよ」

 多分、紫乃さんは人が言いかけた言葉を最後まで聞きたがるタイプだ。と思い、無理やり話の内容を変えた。

 しかし、あまりに無計画なせいで、変に素直な気持ちを言ってしまい恥ずかしくなる。

「青柳くんがいいんじゃないかって、言ってくれたんだよね」

 高耶の方を見る。会って何日も経ってないが、ファッションとかマナーとかには興味がないものだと勝手に思っていた。似合いそうな髪型をお勧めするなんて、意外だ。

「なんだよ。二人してこっち見るなって。っていうかほら。やっぱり、似合うって言っただろ」

「うーん」

 外側に巻かれた髪を触りながら笑っている。その手の爪が宝石のように輝いている。なにも塗ってはいなそうだが、丁寧に磨かれているのだろう。

「まあ、たまにはいいよね。こういうのも」

 紫乃さんが髪の毛の先をいじりながら嬉しそうに呟いた。俺は初めて会った時の、苛立ちと疲労が見える表情を思い出し、心配な気持ちが生まれた。その急激といえる変化は、どこかに無理を生まないだろうかと。

「二人はね、もっとシャキッとしたほうがいいよ。余計なお世話かもしれないけどさ」

 紫乃さんはそんな俺の心配には気がつくことはなく、お節介を焼いてくる。

「シャキッてなんだよ」

 高耶は毒づいているが、紫乃さん言っていることはなんとなく分かる。俺も高耶も体の線が細いし、姿勢もいいとは言えない。前髪も目にかかるくらい長かったり、寝癖をちゃんと直してなかったりしている。言われたことは抽象的だったが、思い当たる節はいくらでもあった。

「シャキッとしていこう! ね、二人とも!」

 雨のせいで暗い廊下だが、紫乃さんの周りはなにか、暖かな風が吹き出しているような陽気を感じた。

 笑顔が太陽のように眩しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る