5日目

「おい、咲太。昨日は大丈夫だったか?」

 降りしきる雨の中、校門の前に待ち構えている高耶は俺を見つけるとすぐに声をかけてきた。

「ああ。心配かけてごめん」

 高耶の顔が透明のビニール傘越しに見える。随分と年季が入った傘だ。節々に錆が湧いている。

「来て早々悪いんだけどさ。ついて来てくれ。紫乃のやつ、昨日から様子が変なんだ」 

「変って、どんなだよ」

「言葉で伝えるのが難しい。とにかく来れば分かるって」

 そう言って高耶は小走りで下駄箱まで走る。しょうがなく俺も走ってついていく。朝のホームルームまで二十分もあるのに、なんでこんなに急がなくちゃいけないんだ。

 急いだせいでスラックスの裾が濡れる。学校まで丁寧に歩いてきたのが馬鹿らしく感じられた。

 下駄箱につき、高耶は傘立てに傘を立てた。俺は折り畳み傘だ。シワに合わせて綺麗にしまいたかったが、高耶がすぐに行ってしまうので、仕方なく乱雑にしたままカバンにしまう。

「っと!」

 高耶が濡れた廊下で右足を滑らせたが、その勢いを走る速度に乗せ転ばずに進んでいる。

 校舎内は結構騒がしい。外では雨が凌げる場所で朝練をしている部員が声出しをしていて、中では吹奏楽部がコンクールに向けての練習している。教室にいる人たちは、たいてい仲のいい集まりで、昨日見たあれこれについて話をしていた。

 教室まであと数メートルのところで高耶が急に動きを止める。

「おい高耶、危ないだろ」

「静かに。いたぞ」

 なにがだよ、と言いかけたがすぐに理解した。そこにいたのは、たぶん紫乃愛聖だ。雰囲気があまりに違うので別人だと間違えそうになる。一昨日も随分と明るくなったと感じたが、今日は別格だ。雰囲気だけじゃなく見た目が違う。

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