第7話

「私も早く、赤さんがほしいです」


「分かりました。それを聞いて、私も安堵いたしました」


お義母さまはそう言って、凄い勢いで食事を再開する。


晋太郎さんは、今度はご飯で咳き込んでいた。


夜になって、いつものように敷いた布団と布団の間に衝立を立てる。


足のついた大きな一枚板の衝立は、床から少し浮いていて、布団に横になれば、その向こうの様子が少しは見ることが出来る。


先に横になっていると、ちょっと遅れてその人は入ってきた。


「明日は、お義母さまと市に行く予定なのです」


「そうですか」


唐草渦巻きの向こうで、晋太郎さんも床に入った。


「何か欲しいものはありませんか? 明日はお勤めなのでしょう?」


「……。そうですね、では、アンコウがあればお願いします。鮭もいいですね。コイやサワラも好きです」


「あ、私もサワラの味噌焼きは好きなのです。では、あればサワラを買ってきます」


「お願いします」


「はい!」


ごそごそという衣ずれがして、晋太郎さんは衝立の向こうで背を向けた。


「あ、あの……、晋太郎さんも、子供が欲しいと思おいですか?」


「……。それが勤めだとは、思うております」


「ならよかった」


ほっとして、ため息をついた。


「子は授かり物と申します。早くそうなればよいですね」


私も寝返りを打つ。


「おやすみなさい」


「おやすみ」


明日は十日市だ。


久しぶりの遠出になるし、しっかり寝ておこう。


私はすぐ手の届く隣で寝ている人に思いを馳せる。


そうか、アンコウか。また一つ、この人のことを知れた。


よく実家で食べていたサワラは、どこで買っていたのだろう。


あれを一度、晋太郎さんにも食べさせてあげたいな。


そうだ。今度家に頼んで同じものを取り寄せてもらおう……。


そんなことをあれこれと考えているうちに、いつの間にか眠っていた。

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