第18話 ぼく男の子なのに……鼻血もんだよアレスきゅん!

 ターラの街まであともう少し。アタシたちは、のんびりと街道を歩いていた。街に近づくに従って、人や馬車とすれ違うことも多くなってくる。


 アタシたちは、街についてからどうするかを三人で色々と話し合っていた。ミシェパの話は都度、アタシがアレスくんに伝える感じ。


「アレスが追われてるっていうなら、なるべく目立たないようにしないとね」


 ってアタシの言葉に、アレスくんがコクリと頷いた。サラッサラの髪がサラッと下がって再び顔を上げたときには、吸い込まれそうな青い瞳がアタシを見てるんだ。


 これがもう超カワイイの! 女の子みたいな綺麗な顔で見つめられるたびに、アタシの胸がトゥンクってなっちゃうんだわ!


(この変態痴女が! アレスヴェル様に汚らわしい目を向けるんじゃない!)

 

 このうるさい監視がいなければ、アレスくんを宿に連れ込んで……じゅるっ。


(お前! 目立たないようしようと言ってるそばから、子どもをかどわかそうとする変質者の振る舞いになっておるではないか!)


 ハッ!? 確かにそうだわ!


 一瞬、マジで反省してしまったアタシを、すぐ目の前を歩いていたアレスくんが振り返って不思議そうな顔で見つめていた。


「シズカ、ミシェパはなんて言ってるの?」


「ミシェパ? あっ、えっとね。シズカお姉ちゃんは、とても信頼できる人物だから、安心してシズカお姉ちゃんに一杯甘えるといいよって!」


(貴様! アレスヴェル様によくもそんなウソを!)


 ジィィィィ。

 

 アレスくんが立ち止まって、アタシの瞳をジッと覗き込む。ヤバイ……なんか怒ってる?


「シズカ、嘘ついてる」

 

 どうしてバレたし!?


(ワハハハ! さすがはアレスヴェル様! 痴女の邪な嘘など簡単に見分けられてしまうのだ! まさに魔王の器! シズカ、ザマァ! ザマァアア!)


 あんたまさかアタシのノートパソコンでWeb小説とか読んでないでしょうね?


(もちろん読んでおるが? 私は異世界恋愛ジャンルが好きだな! とくに少年主人公でヒロインが狼の娘のパターンは、なんという、こう……たまらんな!)

 

 そうなんだ。アタシはどっちかっていうと主人公の少年がお姉さんに剥かれ……ハッ!? アレスくんを追手の目から隠せる方法を思いついた!


(賛成だ! 詳しく!)


 まだ何も言っていないのに、なぜかミシェパが賛同してくれた。


 私が考えた案、それはズバリ――


「アレスくん女装作戦~♪」

(わー---い! パチパパチ!)

「ちょ、シズカ!? また頭おかしくなっちゃったの!?」


 またまた本気で心配してくれているアレスくんをよそに、アタシはミシェパに思いついた作戦を説明する。


 それは追手の追跡から逃れるために、アレスくんには女の子になってもらうというもの。ミシェパにイメージが伝わるよう具体的に考えてみる。


 まず追手が追ってくる!


「おい! お前、この辺りで女と少年の二人をみなかったか!」


 と追手が街の人に訊ねる!


 街の人は


 「いんや。女の子を連れてる女しか見たことねぇな」


 と答える! 


「なら仕方ない。他のところを探すか」


 と考えた追手は、まったく別のところ探しに行く! 


 以上、完璧!


(おぉおお! 素晴らしい!)


 でしょ? 


 それにアレスくんなら、このままの格好でも女の子で十分イけそうじゃん?


(確かにその通りだ! だが念には念をいれてだな……メイド服! アレスヴェル様にはメイド服を着て貰うことを所望する!)


 ミシェパの言葉を聞いて、思わずアタシはアレスくんがメイド服を着ている姿を想像してしまった。


『ぼ、ぼく男の子なのにスカートなんて……モジモジ』


 ふぉおおおお!

(ふぉおおおおお!)


 この一瞬、アタシとミシェパが完璧にシンクロする。


 シンクロで二人同時に鼻血を噴水していた。




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