ツイスターゲームをするお姉さん
「真白さん、そろそろ諦めてもいいんですよ?」
「何を言ってるのかしらたか君は。私はまだまだ余裕なんだけど?」
旅行初日、夕飯の後に真白さんが生配信をしているはずだったのだが……何がどうしてこうなったんだ?
今俺と真白さんは色んな色のマルが書かれたマットの上で変なポーズをしているのだ。そう、分かる人には分かるあのゲーム――ツイスターゲームだ。最初は普通に雑談をしていたはずだったんだ。それなのにちょっと遊びましょうかと真白さんが取り出したのがこのマットだった。
「……………」
しんどいポーズをしながら、俺はどうしてこれを持ってきたんだと素直に意見を言いたい。でも今変なことをすれば集中力が欠けてしまい体勢を崩してしまう……ええい疑問は後だ後!
「……ふぅ……ふぅ」
真白さんの辛そうな息遣いが聞こえるがそれは俺も同じだ……!
ちなみに俺たちの様子をそのまま映すと顔が映ってしまうため、それを防止するために音声のみ視聴者に聞こえる感じだ。みんなからすればそれでも全然いいとの意見が多かったのでこうなったというわけである。
真白さんのスマホが配信用としており、俺のスマホはちょうどツイスターゲームの色読み上げアプリが何故かネット上に転がっていたのでそれをダウンロードして使っている。
『Aは左足を緑に』
『Bは右手を赤に』
スマホから聞こえてくる機械音声に従うように、俺と真白さんは交互にその通りに足と手の場所を変えていく。
「……くぅ!」
「……なんでそこに来るのよもう!」
いやこのゲームをやろうって言いだしたのは真白さんですからね? というか知っていたことだけど真白さんは体が柔らかい、その反面体が硬い俺からすればちょっとどころかかなりしんどいぞこれは。
後でコメントには目を通すつもりだが、チラッと見えた画面には投げ銭を示す色付きのコメントが大量に見られたが……本当にみんな無茶だけはしないでほしい。
『Aは左手を青に』
「……よっこらせっとおおおおおお!?」
腕を伸ばしその色に手を置いたまでは良かったのだが、目の前に真白さんの顔が位置する場所だった。真白さんはニヤリと笑い、体勢がキツイはずなのに顔を近づけて小さくキスをしてくる。思わず体の力が抜けそうになったが何とか耐えると、今度は真白さんに指示が飛んだ。
『Bは右手を黄に』
「そっちかぁ。たか君、ちょっと腰の位置を下げてもらっていい?」
「りょ、了解です……」
「ごめんね……あら」
「!?」
お腹を天井に向けるような体勢、腰の位置を少し下げるようにするとこれまたしんどい体勢だ。それに……ちょうど男のシンボルの場所に真白さんの顔が近づいた。あらあらと楽しそうにする真白さんはそのまま顔をかなりの勢いで近づけた。
「ちょっと真白さん!」
「うふふ~。ほれほれ、楽になっていいんじゃない?」
真白さん一応配信中なのにそれくらいにしてもろて!
流石に揶揄い過ぎたと思ったのか真白さんは舌をペロッと出してごめんなさいと口にした……可愛いなおい。
真白さんが顔を赤くして目がハートになっているのは俺の見間違いということで取り敢えず再開しよう。
『Aは右足を赤に』
お、これは楽そうだな。少し足を伸ばすようにして真白さんの下に潜り込む。あまりキツイ体勢でもないので全然余裕だった。
『Bは左手を青に』
真白さんが腕を伸ばし青に手を置いたのだが、さっきよりも俺の体に真白さんの体重が掛かってきた。
「し、しんどい……」
「ふ……ふふ、諦めたらどう?」
そういうことを言われるともっと頑張りたくなるのが男の子ってもんだ。
それから少し俺と真白さんの攻防は続き、すぐにそれも限界が来た。俺の体が真白さんの体の下に潜り込んだ時、そこで俺の体力は限界が来たのだ。
「……くああああああダメだああああああ!!」
「え? きゃ♪」
もう負けでいいですからと、背中を付けた俺は真白さんの体も一緒に抱きしめながら力を抜いた。温泉を済ませ夕飯を食った後なのにこうして汗を少し掻くのは何というかアホだなぁと思いつつ、お互いに息を整えるのだった。
「ふぅ……はぁ……お姉さんの勝ちね?」
「……はい。負けですね俺の」
「うふふ~♪」
しっかしこれは部屋の分でいいからシャワーを浴びないとだなぁ。
「はい、ということで私の勝ち――投げ銭えぐいことになってるんだけど」
「……あ~」
おかしい、俺たちは視聴者のみんなに音声しか届けてないのになんだこの投げ銭の量は……数えるのが怖くなってきそうだ。
真白さんの声が喘ぎ声みたいに聞こえてヤバかったとか、エッチなプロレスありがとうございますやら色々書かれていた。取り敢えずエッチなプロレスはやめろとツッコミだけは入れておくのだった。
「でもたか君、大分私に遠慮してたじゃない? 私は思いっきりたか君のたか君をスリスリしたけど、たか君は必死に触れないようにしてたじゃない?」
「それは……まあ」
「別に遠慮なんてしなくて良かったのに。あぁでも、この後のプロレスで思いっきり発散させられてしまうのかしら♪」
「うおっほん!!」
いやんいやんと手を頬に当ててクネクネする真白さんから視線を外し、俺はコメントを眺めるためにスマホを覗き込んだ。
:この後のプロレスって!?
:聞くんじゃねえよ
:興奮したので責任取って
:一人で抜いてろ
:草
:けど旅行っていいなぁ。俺も彼女と旅行行きたい
:まずは彼女を作れな?
:……………
:なんかごめん
:謝るな。それは俺に……いや俺たちに効く
:巻き込むな
:www
「あはは……まあでも、偶にはこうやって旅館に泊まるのも悪くはないかな。何より飯が美味い! 真白さんの料理ももちろん美味しいんだけどね」
「たか君!!」
抱き着くのではなく、コメントを眺める俺の隣に真白さんは寝転ぶのだった。スマホの画面は一切見ず、俺の顔ばかりを見る真白さんに苦笑してしまう。さて、最初の雑談と今の何とも言えない勝負によって時間は約束の三十分になろうとしていた。
「よし、それじゃあ終わりますかね」
「ですね。ちょっとシャワー浴びないと」
「一緒に浴びましょうか。その方が早いでしょうし」
「分かりました」
:自然な流れで一緒にシャワーか……
:裏山
:この間の配信といい見せつけてくれるじゃねえかマシロよ
:だからアンタは何なんだよww
:失礼します。マシロさんには女性としての誇りはないんですか? 男に媚びるそのやり方吐き気がします。私にはあなたのように自分の体を安売りするのは理解に苦しみます
:変なのは無視でブロックだぞみんな
:分かってる
:あいあいさー!
……最近こういうことを書く人もそこそこ居るんだよな。時にはDMにも来ると真白さんに聞いたことがある。コメント欄で喧嘩が始まるようなことはなく、平和な流れで終わるかと思いきや、綺麗な微笑みを浮かべた真白さんがこう締めるのだった。
「自分の女としての部分を利用したことはともかく、誇りとか大げさなことは考えたことはないかなぁ。毎日楽しく配信をするだけですし? ま、たか君が傍に居てくれればそれだけでいいので、誇りなんてものはたぶんその辺に落としてきました。というわけで今日はこれで終わります。旅行の纏めというか、動画も出そうと思ってるので良かったら見てね?」
そうして配信は終わった。
スマホをテーブルの上に置いた真白さんは早速と言わんばかりに俺の腕を取った。
「さあたか君、少しシャワーを浴びましょう? その後は……フフ」
この後、滅茶苦茶真白さんの望むようにしてあげた。
ちなみに、この配信を俺たちの家族が雁首揃えて見ていたことを後から知り色んな意味で羞恥に染まるのをこの時の俺はまだ知らなかった。
更に言うなら宗二と林檎さんもそうだし、由夢さんと愛理さんも見ていたとか。真白さんはもっとラブラブすればよかったかしらと言い出す始末、でも俺もすぐに受け入れてしまう辺り段々と真白さんの影響を受けていることを実感するのだった。
【あとがき】
部屋を掃除している時にふと出てきた懐かしい漫画、ついつい掃除を忘れて読み耽ることがあると思うんですよね。
掃除してたら出てきた“いちご100%”の漫画、やっぱり東城は可愛いなぁとか思いながら途中の二巻くらいが消失していたことに気づいて絶望しました。
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