Life3-14 二人専用のお家を作ったのでイチャイチャしてください

 俺が立ち上がったのを見たレキとユウリもこちらに駆け寄ってくる。


「ジンさん。大丈夫ですか? 一応、【回復ヒール】はかけておきましたが……」


「おかげで倒れる前より元気なくらいだ。迷惑かけたな」


「そんなことないです。私もまさかおっぱいでジンさんが意識を失うとは思わなくて……」


「いや、そこはユウリが気に病むことじゃないと思う」


「そうですか? じゃあ、これからも押しつけても大丈夫ですか?」


「……時と場合によりけりで」


「はいっ」


 ……おっぱいを押しつけてもいい許可をもらって笑顔になるのは世界でユウリだけだろうな。


 俺も役得だから、全然文句はないどころか本来ならお礼を言わなければならない立場なんだけど。


「ジン。元気になったなら教えてほしい。私の胸、どうだった?」


 言えるわけがない。


 この間まで妹のように可愛がってきたレキのおっぱいの感触を本人に伝えなければならないなんて、なにかの罰ゲームか?


 ……だけど。だけど、レキに一人の女の子として向き合うと約束したのだ。


 だから、俺は渇く喉から言葉を絞り出す。


「……よかった、です」


 死にたい。穴が入ったらすぐに入りたい。そして、その上から土をかぶせてほしい。


「ん。なら、よかった」 


 レキは満更でもないのがせめてもの救いか。


 このままおっぱい談義に花を咲かせられても困る。


 俺は少しだけ歩く速度を速めた。


「すみません、お待たせしました」


「いいのいいの。むしろ、楽しんでいたところ邪魔して悪かったわね」


 そう言って謝るカルネアさんの視線はリュシカに向いていた。


「気にしてないよ。それよりも姉さん、私たちを呼んだ理由は後ろのそれ?」


「ええ、そうよ。完成したの、あなたたち専用のログハウスが」


 カルネアさんの背後に簡素なログハウスが完成していた。


 さきほどエルフ男衆が組み立てていたのはこれだったのか。


「私たち専用って……いったい何に使えっていうの、姉さん?」


「それはもちろんナニよ」


 ……んん? 聞き間違いかな。


「カルネアさん。もう一回教えてもらっていいですか?」


「流石に外で全裸は恥ずかしいと思ったから専用の小屋を作っておいたのよ」


「くそっ! 確定させてきやがった!!」


 なんでそう思い切りが良いんだよ……!


 どんな思考をしていたら夜専用の小屋を作ろうという発想に至るのか。


 そもそもどうして俺たちがヤること前提に話が進んでいるのか。


 これがよくわからない。


「……カルネアさん」


「……ユウリちゃん」


 卑猥コンビががっちり握手を交わしていた。


「でも、ごめんなさい。ここはリュシカとジンくん専用なの」


「……カルネアさん……!」


 あっ、すぐにコンビ解散した。


 ……いや、待て待て待て。もっと聞き捨てならない言葉が聞こえた。


「ま、待ってください! 俺とリュシカ専用ってどういうことですか!?」


「そうです! 差別はんた~い!」


「平等にしろ~!」


「………………」


 リュシカも何か文句言って! 


「まぁ、落ち着きなさい。それに関してもしっかり説明するから。これを見てほしいの」


 カルネアさんがパンと手を叩くと男衆の一人が丸められた紙を持ってくる。


 彼女は受け取ったそれを地面に置くと、クルクルと広げてみせた。


「……これは」


「……先日、エルフォンさんが見せてくれたものと同じ文字が使われていますね」


「そう。実はあの後、みんなの力になれないかと手がかりを探していたら、これを見つけたの。読み上げるわね」



『エル・リスティアの血を継ぐ者よ。

 

 愛する男と【エルフの宝樹】に純粋な愛を示せ。


 さすれば、【エルフの宝玉】が与えられるだろう』



「……このエル・リスティアというのは……」


「代々エルフの族長を務めてきた家系……つまり、私たちのことを指すわ」


「……それならカルネア姉さんがやっても問題ないということじゃ……」


「バカね。百人と結婚している私に純粋さなんてあるわけないでしょ」


「自分で言うんだ……」


 リュシカも実姉のまさかの返しに驚いていた。


 俺も同じ事を思った。


「以前のものとは少々文言も変わっていますね。パートナーが男性限定になっています」


「おそらく私たちの先祖が代を重ねるにつれて条件を見つけ出したのでしょうね。そして、こうして残してくれた」


「……これは一つ。純粋な疑問なのですが」


「なにかしら?」


「普通は先日の古いものより、新しいこちらが先に見つかるのでは?」


「そ、それはたまたまよ、たまたま。パパももう年だから見落としていたのかもしれないわ」


「……そうですか」


「とにかくそういうことだから、私たちはこのログハウスを用意したわけ」


 カルネアさんはユウリから目をそらして、リュシカの肩を掴んで正面から向き合う。


「あとはあなたが朝から晩まで頑張るだけよ、リュシカ」


「過去に受けた応援で最低の言葉だよ、姉さん」


「安心していいわ。二人で楽しんでも私たちは見に来ないから。どれだけ声を出してもバレないわ」


「姉さん! そういう一言がいらないの!」


「もしかして怖いのかしら? 大丈夫。痛いのは最初だけで、その後は気持ちよくなるから」


「そういう励ましを聞きたいわけじゃないんだけど!?」


 リュシカの気持ちがよくわかる。


 カルネアさんの応援はそのまま俺にもつながってくるから。


「だから、今日からしばらくの間、リュシカとジンくんの二人で過ごすのがいいと思う。あなたたちも少しでも早く結婚指輪を完成させたいでしょう?」


 本当にこの文献の通りならば、カルネアさんの言うとおりにするのが正しいのだろう。


 それはつまり、リュシカと大人な行為をする可能性が出てくるわけで……。


 俺にはリュシカと同じくらい大事なレキとユウリもいる。


 この場の勢いで決めてはいけないと思った。


「……わかりました」


「そう! じゃあ、さっそく二人で」


「その前に話し合いをさせてください。これは俺たちにとっても大切な問題なので」


「……わかったわ。その間にログハウスには必要なものを運んでおくから自由に使ってちょうだいね」


 ほんの一瞬、カルネアさんの表情が揺らいだ気がした。

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勇者パーティーをクビになったので故郷に帰ったら、メンバー全員がついてきたんだが 木の芽 @kinome_mogumogu

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