Life3-13 目覚めは妻の膝枕で
……眩しい。
目が覚めると、太陽の光がまぶたを刺激する……が、不思議とチカチカするような痛みはなかった。
水底から意識を引き揚げられた俺は身じろぎをする。
すると、俺を心配そうに見つめる水着姿のリュシカと目が合った。
「ジン! 目が覚めたんだね」
「ハハッ、なんとか……」
「意識を失う前になにがあったか覚えているかい?」
「ユウリのおっぱいに埋もれて、レキとリュシカのおっぱいを揉んだ」
「ご、ごほん! そこまで鮮明に記憶に残っているなら大丈夫そうだ」
胸を揉まれた時を思い出したのか、リュシカの耳が少し赤くなる。
彼女は照れるとすぐに表情に出るからわかりやすくて、可愛い。
本当に何千年と生きてきたとは思えないくらい純情な乙女だ。
「二人は……?」
「私に任せて、あそこで作戦会議してる。……起きたときに大きい胸があったら、また刺激が強いかもしれないからって」
どんな配慮の仕方だよ。
リュシカの視線を追えばすでに水着から着替え終えた二人がいた。
目が覚めた俺に気づいたようで、手を振ってくれている。
ただ近寄ってこないのはリュシカの言ったとおり、俺に刺激を与えないようにするためだろう。
……いや、だから、どんな理由だよ。
「実はあの後、ジンも鼻血出しちゃってさ。それでちょっと気をつけているのかも」
「わるい。心配かけたな」
「本当だよ。ビックリした。まさか意識を失っちゃうまでいくなんて……」
それだけ三人の胸の感触に興奮したというわけだが、それは口にはしないでおこう。
この秘密だけは墓まで持っていく。
「だから、もう少しここでゆっくりしておくといい。まだ慌てるような時間でもないからね」
そう言ってリュシカは俺の頭を優しく撫でてくれる。
……そういえば、さっきから気になっていたんだが。
「……もしかしてリュシカ。膝枕してくれてる?」
「……うん、熱弁するくらいジンが好きな私の太ももでの膝枕。……どうかな? 痛かったりしない?」
「最高です」
「あははっ、即答って。なら、よかった」
そうか……この後頭部のほどよい柔らかさはリュシカの太ももだったか。
頭を支えてくれているのだが、ちょうど俺にピッタリな感覚で沈み込むおかげで王城での枕よりも寝心地がいい。
お昼過ぎの温かさと、安らかな川のせせらぎが環境音となって油断すれば一眠りしてしまいそうな居心地の良さだった。
心安まるとはまさにこのことだな。
「リュシカは着替えなくてよかったのか? 濡れたままだと風邪を引くだろう?」
「問題ないよ。先に体は拭いているし、気温も全然寒くないから」
「それならいいんだけど」
「だから、しばらくはこのまま膝枕できるよ? せっかくだから何かおしゃべりでもしようか」
その申し出はありがたい。
頭を回しておかないと本当に昼寝にいそしんでしまう。
ここで寝てしまうと夜に眠れなくなるからな。
三人に囲まれた状態でずっと起きておくのはきついのが正直な感想だ。
「そういえば、さっき思ったんだが……ここの太陽って見上げても眼が痛くならないよな。雲も一つも無いし……」
「あぁ、それはあれが魔法で作られた疑似太陽だからだよ」
「……疑似太陽?」
「そう。魔法で作られた太陽……というより大きな空に浮かぶ照明と言った方がわかりやすいかもしれないね」
「ツリーハウスの【光球】みたいな?」
「正解だよ、ジン。エルフの里は吹き抜ける風も、流れる川の水も全て魔法から生まれているからね」
「……それってどういう……」
「そうだね……ジンはもう私の夫だからいいか。実はエルフの里は普段私たちが暮らしている地上じゃなくて、地下にあるんだよ」
「え? 地下に?」
とんでもない機密情報を聞いてしまったのではないだろうか。
ただの昼下がりのおしゃべりからとんでもないところに発展してしまった。
「だから、【転移魔法】が使えて、かつ居場所を把握しているエルフじゃないとここには来れないわけ。唯一、例外があるとすればたまたま地中を掘り進めたらここに出るくらいだけど……今までそんな事例はないから気にしなくていいと思う」
「魔法を極めると、そんなことまで出来るんだな……」
「ああ……だから、私は魔法を研究したんだ。そうしたら【賢者】の加護まで授かって……それでも全ての魔法はわかりきっていない」
例えば、とリュシカは続ける。
「この木がなんで【エルフの宝樹】なんて呼ばれているかわかるかい?」
「いや、さっぱり……」
「答えはね、この木の持つ魔力がエルフの里を支えているから。さっき説明した疑似太陽も、生み出される川の水も、気持ちいいそよ風も、全部【エルフの宝樹】の魔力をもとに発動している」
「……木って魔力を持つのか……?」
「世界中には一部そういう代物があるらしい。このご神木みたいに魔力を持って生まれるものがね」
……初めて【エルフの宝樹】を見たときに肌に感じた威厳は本当にこの木のものだったんだ。
【エルフの宝樹】は間違いなくエルフの里を支えてきた自負を持っている。
数えるのも気が遠くなるような年月の間、エルフの里を支えてきたプライドを。
「そもそもエルフの里が地下への移動を決めたのは、【エルフの宝樹】を見つけたからとされているくらいなんだ」
「……外敵に見つからずに、自分たちの世界を維持できるからか……」
「そういうこと。だから、エルフの里は魔王軍に荒らされずに生活できている」
それはエルフたちからすれば【エルフの宝樹】様々だ。
神様と呼ぶ気持ちも理解できた。
「じゃあ、もし【エルフの宝樹】が枯れたりしたらどうなるんだ? エルフの里が維持できなくなるんじゃ……」
「それは心配いらない。【エルフの宝樹】は魔力を栄養に変えて根っこに蓄えているから、枯れることはないんだ」
「……凄いな、【エルフの宝樹】」
「凄いんだ、このご神木様は」
そう言って、リュシカは【エルフの宝樹】に向けて手を合わせる。
「私たちの人生が良い方向に行きますようにって祈っておいた」
「ハハッ、それはいいな」
俺もリュシカの見よう見まねで【エルフの宝樹】に俺たち四人の結婚生活が楽しいものでありますようにと願いを込める。
「リュシカ~! ジンくんたち連れて、一緒にこっちまで来てくれる?」
ちょうど話が一段落したところで、カルネアさんが俺たちを呼んでいた。
エルフ男衆のねぎらいにでもきたのだろうか。
「……残念。もう終わりみたいだ」
「……行かないっていう選択肢はないか? 俺はもう少しリュシカの膝枕を堪能したい」
「とっても魅力な提案。でも、あんまり待たせるとカルネア姉さん、すごく機嫌悪くなるよ?」
「……仕方ない。またしてもらうとしよう」
「ジンが望むなら膝枕くらい、いくらでも」
「約束だからな」
「私もジンを独占できて嬉しいから、絶対に破らないよ」
その言葉を聞いて俺はゆっくりと立ち上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます