第60話 兎を狩る

「えっとね……」


 時間があるから食材探しに行くって話をエンケリンちゃんにする私。


「もう。ちゃんと言ってよ、リーベスお姉ちゃん」


 しょうがないなぁ、と言った感じで話すエンケリンちゃん。


「あはは、申し訳ない」


 笑って誤魔化す私。あっ、そうだ。


「そう言や、何か目的の物ってあるの? 魔法で探せば、探せると思うけど?」


 そんな疑問と提案をオーパ爺ぶつける私。話題逸らしじゃ無いからね!


「そうじゃのう。兎とスグリの実かのう」


 兎は、まぁ兎なんだろう。スグリの実は知らない。こっちの特有の物かな? 取り敢えず探して見ようか。


「分かった。ええと……探索!」


 兎とスグリの実に反応するようにして探索魔法を掛ける。


 うわぁ……一杯あるわぁ。


「ええと、スグリの実って今が旬?」


 ある程度、絞れる条件が欲しいね。


「いや、旬にはまだ早いのう」


 そうか、だったら熟してるの限定でっ……と、うん。殆ど消えたね。兎はちょっと入った所にちらほらと、かな。


 再度危険生物をチェック……よし、居ないね。


「見付けたから行こうか」


 そう言って真っ直ぐにその方向に向かおうとする私。


「待つんじゃ。お前さん森に入った事はあるのかのう」


 当然無いじゃろうって感じで、オーパ爺がそんな事を言ってきた。


 勿論無い。だが、私はそんじょそこらの事ではダメージを受けないし、毒も効かないのだ。

 だから、私が先行しても何の問題もない。いや、歩き馴れないからずっこける位かな?


「まぁ、大丈夫だよ。場所知ってるの私だけだしね」


 そう言って進み始める私。


 下草を魔法で切って吹き飛ばしながら進む私。ただ切っただけだと踏んで滑ったり、埋もれた何かに引っ掛かるかも知れないからね。足元が見えるというのは大事です。


 そう言うわけでずんずん進む私。以外に余裕だな。実に快調。そう言えばこっちの私の体はチート仕様だ――


「リーベスお姉ちゃん……」


 ――あ、


 その事に思い当たったと同時に、エンケリンちゃんのそんな声が妙に遠くから……。


 しまったー! 振り返るとかなり離れた後方にエンケリンちゃんとオーパ爺を置き去りにしていた。


 急いで戻る私。


「ごめんね!? 何か妙に調子良くって……」


 ううう、言い訳にもならないよ。スペックだけ高くても、中身がぽんこつならこの体たらくよ。二人の位置なんて幾らでも確認するすべはあったはずなのに……。


「お前さん……とても歩き慣れてる様に見えん動きで、何故そんなに……」


 ちょっと息が上がったオーパ爺が呆れを含んだ声音で言う。


「へ? いや、あはは……」


 チートです。とは言えないし、何と言ったものか……。


「すごいね! リーベスお姉ちゃん! 何もないところを歩いてるみたいに、するする行っちゃうんだもん!」


 そう、興奮気味に告げるエンケリンちゃん。 


 続いて、


「でも、おいてかれるのはさびしいかも……」


 言葉通りに、ちょっと寂しげな感じで、エンケリンちゃんがそう……零した!?


「うわああ!? エンケリンちゃんごめんね! これからは気を付けるからね!?」


 私は慌てて謝り倒し、もう置いてかないと心に誓う。


「うん!」


 エンケリンちゃんが、何時もの様に元気にお返事してくれた! 


 ふぃぃーー。何とかなったかな? そこまで気にしてはいなかったのかな?


 不味い不味い、さっきは調子に乗りすぎたよ。探索魔法で常に距離を確認してれば何も問題ないのだ。最初からしてろよ、愚か者め。


 気を取り直して、兎を目指して暫く進む。勿論今度はエンケリンちゃん達を置き去りに何かしない。やれば出来るんだよ、やれば。初回でやれない事が問題だよね。


「そ――


「待つんじゃ、これ以上近付くと逃げ出すぞい」


 ――ろそろだね」


 私の言葉にオーパ爺の言葉が被る。……へ?


 私は魔法では確認出来るが、草むらの中に居るのか肉眼では見えない。オーパ爺はどうやって?


「分かるの?」


「まぁのう」


 当然の事の様にあっさりと答えるオーパ爺。色々気になるけど、今は逃げられちゃうからね。


「どう仕留めたら良い?」


 そう言えば私は兎を狩ったことなど無いのだ。現代日本人で兎を狩った事がある人なんてまず居ないだろう。だから経験者、と思われる人に聞くのだ。


「出来るだけ傷は付けない方が良いかのう」


 まぁ、そうだろうね。具体的な方法を聞きたかったんだけど……。思えば、私がどの程度迄出来るか分からないから、答えようがないかな?


 ……ふむ。確か獲物を狩ったあとは血抜きをするってのが定番だよね?


「血抜きってするの?」


「ふむ? そうじゃな」


「じゃあ、血って全部抜いて良い?」


「ふむ? 構わんが……」


 とっても怪訝な感じなオーパ爺。


 んじゃまぁ、それで行こうか。


 兎の血を……転移で良いかな。数メートル脇に全部転移で、


「転移」


 パシャ


 遠くで液体が落ちる様な音がした。


「うん、終わった。もう多分死んでる」


「何をしたんじゃ?」


「兎の血を全部抜いた」


「は?」


 オーパ爺、そんな面白い顔をしないでよ。笑っちゃうでしょ。

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